展示航走を競艇(ボートレース)予想に活かす見方や読み方を教えましょう

展示航走を競艇(ボートレース)予想に活かす見方や読み方を教えましょう

競艇(ボートレース)のレース前に行われるのが、展示航走です。
そもそも「展示航走がなぜ行われるのか知らない」「展示航走の見方や調子の読み方がわからない」という方は多いのではないでしょうか。
実際、現地にいる予想担当の記者、すなわちプロフェッショナルが見ても、完全にその内容を活用できない時があります。

逆に言えば、展示航走の見極めに詳しくなれたら、舟券予想にとっては大いに武器となると言えるでしょう。
また、予想以外の部分でも、展示航走自体がボートレースの楽しさのひとつであるとも考えられます。

この記事では、展示航走がどういった内容で構成されているのか。
展示航走はそれぞれどのポイントに注目すべきか。
展示航走のルールについて。また、ルールに違反するような選手はいないのか。
こうした各点について、要点をわかりやすく解説していきます。

展示航走はスタート展示と周回展示と展示タイムの3要素

展示航走というのは、レース前に行われる「顔見せ」的な一連の流れになります。
公式サイトを含め、「展示」と縮めて呼ばれる場面も多いですね。

展示航走は3つの要素で構成されており、いずれも選手とボートの調子を図る重要なものになっています。
それぞれ以下に列挙しましょう。

● スタート展示
● 周回展示
● 展示タイム

いずれも実況の中で出てくる単語ですが、慣れ親しんでいないと「?」マークがついてしまう内容ですね。
展示航走は「スタートのタイミング」「レースのリハーサル」「参考タイム」を見せる機会であると考えてください。

これだけだとファンサービスでやっているようにも見えますが、実は選手にとっても大切な時間です。
競艇場のコンディションは、一日として同じであることはありません。
天気、風向き、風の強さ、気温など、ちょっとした要素だけでモーターの稼働する条件は変わってしまいます。
選手たちはコンマ1秒を争う世界で微調整を繰り返さなければならないので、展示航走は重要な「本番前の最終試験」の機会になるわけです。

展示航走の見方や読み方はどうすればいいか

では、展示航走を構成する3つの要素について、ひとつひとつがどういう内容であるかの説明をします。
また、各展示の内容をボートレースの予想に活かす上で、それぞれのプロセスの見方や読み解き方を紐解きますので、じっくりお読みいただければと思います。

スタート展示

本番と同じく、ピットアウトからスタートまでを行うプロセスです。
ピットとはモーターボートを係留しておくべき場所で、合図とともに一斉に飛び出す方式になっているんですね。
この離れる動作を「ピットアウト」と言います。
ここからすでに戦いは始まっていて、ピットアウトが遅れた場合、有利な内側のコースを他の艇に奪われることもあるんです。

競艇の面白さは、この「自分が進入したいコースを奪われることがある」点にもあるでしょう。
スタート展示では、基本的に本番に入りたいコースを主張します。
同じコースでスタートの感覚を掴まないと、本番で失敗する可能性があるためです。
ただし、レースが「進入固定戦」に設定されている場合、他の艇のコースを奪うことはできません。
(うっかり進入固定戦であることを忘れてコースを奪ってしまうと、重いペナルティが課されます)

一方で、スタート展示で入ったコースに、本番も入らなければならない義務はありません。
スタートが合わなかったりしたら、元のコースに収まることもあるでしょう。
また、インの選手が自分のコースを守るため、早めに動きを見せる可能性もあります。
予想する側としては困ったことではありますが、逆に「そういう事態もあると予想する」楽しみが生まれるのです。

スタート展示の動きそのものは、実際のスタート同様の過程で行われます。
なので、スタート勘が働いているか、乗っているボートの出力を把握できているかについて、スタート展示から読み取ることができます。

周回展示

スタートの練習代わりのスタート展示をしたら、選手たちはそのまま帰るわけではありません。
「周回展示」と呼ばれる、実際のコースを2周するプロセスに移行することになります。
周回展示は順番が決まっていて、1号艇から6号艇まで数字の順に並んで走行する形になります。
1991年から2002年までの間はスタート展示(当時はスタート練習[S練])が廃止されていたため、この周回展示が「展示航走」と呼ばれていました。

周回展示で重要なところは、「選手が実際にレースが行われる水面を全力で航走する」点にあります。
特に、レースと違って経済コースを回る余地があるため、以下のような点に注目すると良いでしょう。

● ボートの直線での伸びはどうか?
● ボートはスムーズにターン(コーナーを回ること)をできているか?
● ボートはターンマーク(コーナーに浮かんでいる目印)ぎりぎりを攻めきれているか?
● ボートはターンをする際にも大きな減速などがないか?

これによって、出走表の数字だけでは判断できない、実際のモーターやボートの調子を推測することができます。
ボートレースの強い選手は、数字が悪いモーター、つまり出力が出ないモーターの調整が非常に上手いです。
このため、開催が後半になってくると、モーターが数値以上のポテンシャルを出すことがよくあります。

「どんなに整備しても良くならない」と泣きのコメントを出している選手もいますが、実際に調子を確認することで、「この選手はスタートさえ決まれば上位に食い込むな」と確信できることもあるでしょう。
スタート展示と合わせて、重要なことがおわかりいただけると思います。

実際にレースが行われる環境で行われる以上、危険もまた同じように伴います。
選手同士の駆け引きやぶつかり合いがないとはいえ、水面が荒れていれば危険なことに変わりありません。
競艇では、実施可能な範囲の天候や風速でありながら、かつ実際にレースをするコンディションとして適さない場合、周回数を減らしてレースが行われることがあります。
本来のレースでは3周するのですが、2周に短縮されるのです。
これは周回展示でも同じで、本来2周するところを1周で終わらせるパターンが存在します。

ちなみに、周回は舟券結果に重大な影響を及ぼすため、もし勘違いして少ない周回でレースを終わらせた場合、「周回誤認」として非常に重いペナルティが課されます。
レースの根幹部分を間違えるのはさすがにプロ失格ですし、八百長を疑われる行為でもあるので、当然の措置と言えるでしょう。

展示タイム

周回展示の際、2周した後の最後の直線のタイムを計測し、競艇場のモニターおよびインターネットの直前情報で公開します。
このタイムを「展示タイム」と言います。
展示タイムが速いということは、それだけモーターが良い出力を出せている証拠であるとも考えられるでしょう。

また、これは競艇場によるのですが、「一周タイム」と「まわり足タイム」を掲示してくれる場所もあります。
展示タイムは直線でタイムを計測しますが、それぞれ一周する周回のタイムと、ターンする時のタイムを取得していることになりますね。
とりわけ「まわり足タイム」が速い場合、スピードを減衰させずにスムーズにターンできている証拠になるでしょう。
現代のボートレースはターンの精度が勝敗に大きく影響するので、重要なデータになります。

とはいえ、展示タイムはあくまでも予想の一要素に留めましょう。
どんなに速いタイムを出していても、スタートで遅れてしまえば発揮しようがありません。
本番では理想的な条件でターンできるほうが少ないわけですから、選手個人の勝負強さや度胸も大切になってきます。

展示航走のルールと手抜きをする選手の有無について

「スタート展示ではバラバラのスタートだったのに、本番ではビシッと決めてきた」
こういったことがよく起こるのがボートレースです。
もちろん、それはリハーサルであるスタート展示でギャンブル性の高いスタートを試してみた結果として、本番で調整を加えてきたと考えるべきでしょう。
単純に「展示がダメだったのに、本番では見違えるような動きをした。展示では手抜きをしていたんだ」と決めつけるのは早計です。

展示航走については、規則によって全力で走ることが義務化されています。
開催している競艇場の関係者はそのように選手に伝えていますし、神経をとがらせてもいるでしょう。

しかし、全力の走りとそうでない走りを見分けるのは相当困難です。
数字などで決まった基準がない以上、ある程度は選手の良心に任せるしかありません。
ファン目線では「あいつは展示で手を抜いている」と思っても、モーターの調子が予想以上に悪かったり、選手本人のコンディションが優れなかったりといった別の要因も考えられます。

ただ、ボートレースを開催する側は八百長が発生することを強く恐れ、疑われるような行動を厳しく取り締まっています。
八百長は競艇という競技の根幹そのものを揺るがす悪しき行為ですから、やすやすとそれを許すわけにはいきません。
だからこそ、選手には展示航走を全力で行うように指導しているのです。

まして、最後の直線では展示タイムが出ます。
そこで手を抜こうものなら、「モーターの性能を故意に誤認させようとした」と捉えられるのは間違いありません。
選手に責任のない偶発的な出来事でそうなったならまだしも、故意に手を抜いていたとすれば、罰則を適用するのもためらわないでしょう。

「競艇(ボートレース)は、選手たちの全力の勝負が行われる公正な競走である」

この大原則があるからこそ、ファンは安心してお金を賭けているわけです。
もしも、信頼を損ねるような行為があった場合、関係者が厳しい姿勢で臨むのは当然と言うべきでしょう。
また、ボートレーサーはプロライセンスを持っている「個人事業主」と解釈することができます。
どんなに上手い選手であっても、「うちの開催に出てください」という声掛かりがなくなれば、その技術を発揮することはできません。
(ちなみに、各開催に選手を呼んで出場させることを「斡旋(あっせん)」と言います)

よって、展示航走で手抜きをしている選手はいないのが前提です。
そもそも、展示で本気を出せない選手が、本番で本気なるものを出せるかというと疑問ですね。

展示航走で転覆してしまった場合

一方、展示航走中に転覆をした場合はどうなるのでしょうか。
そもそも、展示航走中に転覆をするケースがあるのでしょうか。

答えは、「あります」。
ボートというものは、とても繊細な乗り物です。
プロフェッショナルであるボートレーサーが乗っていても、ひとつの判断ミスですぐにひっくり返ってしまいます。
体感速度は時速120kmとも表現される小さなモーターボートで急旋回するわけですから、転覆しないほうがむしろ驚きの曲芸であるとさえ言えるでしょう。

では、展示航走中に転覆してしまった場合はどうなるのか。
この場合、レースへの出走ができない規約になっています。
欠場扱いとなり、買っていた舟券は払い戻されます。
たとえ選手本人やモーターやボートに異状がなくても、変わりありません。

展示航走の後、選手はモーターの整備を行うことができません。
ファンに性能を見せる場なわけですから、そこからさらに調整してしまえば、意味がなくなるからです。
転覆は選手やボートのコンディションを大きく変えてしまいます。
展示航走中の転覆後の出走は、公正競走の原則に反するわけです。

競艇は1日に2回走ることがしばしばありますが、この場合は次のレースには出ることができます。
ただし、転覆はモーターが完全に水に浸かることを意味します。
場合によってはレースが不可能なくらいに性能が落ちることもあり、結果的に欠場を余儀なくされることもあるでしょう。

転覆などのイレギュラーな行為にも「選手責任」と「選手責任外」があり、責任外の場合は情状酌量の余地があるということで、ペナルティが課されない傾向にあります。
ただし、展示航走での転覆は他艇が絡まないことが多いので、よほどの悪天候や浮遊物への接触などでもない限り、選手責任になりやすいですね。

まとめ

競艇(ボートレース)における展示航走について、あらゆる角度から解説しました。

展示航走は「スタート展示」「展示航走」「展示タイム」の3要素に分かれること。
展示航走で手抜きをする選手はいないし、いたとすれば競技から排除されるであろうこと。
展示航走で転覆する可能性はあるし、転覆した場合はそのレースは欠場となること。

これらの内容がおわかりいただけたと思います。
あらゆるスポーツでそうですが、特にお金の動きがある競艇のような公営競技に関しては、「誠実」であることに並々ならぬ注意を払っています。
公正競走が守られているからこそ、ファンは心からの声援を送り、舟券を買って応援するわけです。
それが歪んでしまうような行為に対しては、ハッキリとNOを突きつけなければなりません。

展示航走はそのものがエンタテインメントであり、レース本番への期待をふくらませてくれるイベントでもあります。
ぜひとも「ああでもないこうでもない」と悩みながら、展示航走をありのままに楽しんでみてはいかがでしょうか。

【参考資料】
展示航走関連のスクリーンショットは、ボートレース大村の回答コーナーより。
http://www.omurakyotei.jp/customer/?key=201306

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