競艇が「ボートレース」の通称を冠したのが2014年のこと。競馬、競輪とともに3競に数えられたこの公営競技の大改革は、インターネットの高速回線の普及という大波にも乗って、劇的な売上の向上という結果を生み出しました。
もちろん、売上だけがすべてではなく、その熱い戦いは今も昔も変わりません。それでも、毎日のように増えていくファンがいたからこそ、新型コロナウイルスの世界的流行、いわゆるコロナ禍という極大の危機にも耐えられたと言えるでしょう。
2022年、今年もまたボートレースはグランプリ、往古の時代より親しまれている正式名称を使うならば、「賞金王決定戦」の季節を迎えました。
選手と、ファンと、あらゆる人たちの想いが交錯する6日間の夢の時間。それがどのように織りなされるのか、2022年のボートレースグランプリの出場選手を中心とした開催のポイントを、詳しく解説していきます。
- 2022年のボートレースグランプリはボートレース大村で開催!
- 大村は”競艇発祥の地”!初めての「発祥地グランプリ」開催
- ボートレースグランプリに出場する18人の精鋭をまとめて紹介!
- 2022年12月13日(火)”第11R”「トライアル1st」/遠藤エミ選手が女子レーサーとして史上初の出場
- 2022年12月13日(火)”第12R”「トライアル1st」/ボートレースグランプリにおける「下剋上」のメカニズム
- トライアル2ndから登場の”上位6名”/3日目から登場する最強の選手たち
- 2022年ボートレースグランプリの舞台となる大村の水面についてのおさらい
- 今年のボートレースグランプリは”タイガーマスク”が乱舞する!
- 2022年(令和4年)のボートレースの総決算!頂上決戦を見逃すな!
2022年のボートレースグランプリはボートレース大村で開催!
これまで、ボートレースグランプリを開催するのは大都市のボートレース場(競艇場)が基本でした。多くのゲストを迎え、現地でその熱狂を味わってもらうことこそ、主催者には何よりも求められる能力だったためです。
したがって、多くは「聖地」とも呼ばれる大阪府大阪市住之江区のボートレース住之江で開催され、時折東へとその舞台が「遠征」し、東京都大田区にあるボートレース平和島で催される程度でした。
これら2つ以外では、1996年の第11回を戸田、2007年の第22回を福岡で開催したきりであり、まず師走の最終決戦は大阪か東京か、この2大都市で行われるのが通例でした。
ですが、時代は移り変わるものです。世界はとてつもない流行病の脅威にさらされ、それは今なお完全に終息したわけではありません。一方で、日本を始めとした多くの国々は個人が利用できるインターネットの高速回線でつながり、自宅にいながら手軽に無数のサービスを利用できるようになりました。
ボートレースにおいても、これは革命的な働きをもたらします。インターネットによる番組中継、ひいては舟券販売の隆盛です。その結果としてボートレース振興会に起きた変化こそ、「競艇発祥の地」大村での「発祥地グランプリ」の開催決定でした。
大村は”競艇発祥の地”!初めての「発祥地グランプリ」開催
ボートレース大村は、長崎県大村市にあります。正式名称は「大村市モーターボート競走場」。1952年4月に施行を開始した時から、2022年12月現在まで、ずっと日本最南端かつ最西端の競艇場、ひいてはボートレース場として、高い人気を誇る「競艇発祥の地」であり続けました。
そして、その「インが強い」というボートレースらしさを体現した大村は、昨今のインターネットを用いたPR戦略でユニークな施策を実行し、その挑戦心によって幅広い世代からの支持を集めるにいたったのです。
今回、ボートレースグランプリを開催する運びになったのも、そうした関係者の皆さんの努力があったからに他ならないでしょう。もちろん、さらに下でそれを支えたのは、大村を愛してやまないファンの存在があります。
2020年には、聖地住之江を抜いて初めての売上高トップを獲得。その翌年には、ボートレースグランプリの開催が決定。2022年12月、とうとう「その時」は間近に迫ってきました。
あらゆるボートレースファン、ならびに競艇ファンにとって未知の領域である「発祥地グランプリ」の到来です。
ボートレースグランプリに出場する18人の精鋭をまとめて紹介!
約1,600名ほどが現役でいられるボートレーサー。結果を残せない選手は引退を余儀なくされるこの競技において、一般戦であろうとも優勝にたどり着けるのはほんのわずか。ひいては、SG開催にまで出走できるのは、3%ほどに限定されます。
そして、ボートレースグランプリという至高の舞台に参戦を許されるのは、年初からチャレンジカップまでのあいだに、獲得賞金ランキングのベスト18に入った選手のみ。すなわち、全ボートレーサーのわずか1%ほどだけが、最後の戦いへ駒を進めることができるのです。
では、2022年の映えある出場選手18名は、どのような顔ぶれか。初日の「トライアル1st」2レースに出場する12名の選手、さらにシード選手として「トライアル2nd」から登場する6名の選手について、見ていきましょう。
2022年12月13日(火)”第11R”「トライアル1st」/遠藤エミ選手が女子レーサーとして史上初の出場
ボートレースグランプリの開催は、賞金ランキングの第19位から第60位までの選手が出場できる「ボートレースグランプリシリーズ2022(大村競艇SG)」と並行して開催されます。
このシリーズ戦もまたSGタイトルであるほか、グランプリ本戦の敗退決定者が合流するというシステムになっている点で、とてもユニークなつくりと言えるでしょう。
最後のその時が訪れるまで、ファンが手に汗握るバトルを楽しむことができる仕組みが、しっかりと整えられているわけです。なお、当然ではありますが、グランプリ本戦を勝ち抜いてグランプリ優勝戦に出るのが最大の栄誉であり、同レースは完走するだけでも「儲かる」ようになっています。
【初日トライアル1st第11R】
1号艇:池田 浩二(3941/愛知)
2号艇:桐生 順平(4444/埼玉)
3号艇:毒島 誠(4238/群馬)
4号艇:遠藤 エミ(4502/滋賀)
5号艇:上條 暢嵩(4719/大阪)
6号艇:瓜生 正義(3783/福岡)
かくして、初日の第11Rから、グランプリ本戦が幕を開けます。トライアル1stの初戦は、ご覧のような顔ぶれになりました。
このレースの並び順は、賞金ランキングの上位者が内枠艇に配置され、そこから当落線上の第18位に近づくにしたがって外側に入ります。よって、前年のグランプリ覇者である瓜生選手が6号艇にいることが、それだけ2022年の賞金ランキングも激烈な競走だったと教えてくれるのです。
また、何より注目なのが、女子選手として初めてボートレースグランプリ本戦への出場を達成した、4号艇の遠藤エミ選手でしょう。
遠藤選手は、2022年最初のSG開催であった3月のボートレースクラシックで優勝。女子選手として初めてのSG制覇は、平年と同じペースで賞金を積み重ねることができれば、十分にボートレースグランプリ本戦への参加を可能にするものでした。
そのとおり、遠藤選手は実際にそれだけの稼ぎを得ました。すなわち、賞金獲得がSG優勝のみで終わるものではないと証明することによって、このグランプリへやってきたのです。
今年のボートレースクラシックの舞台は、まさにこの大村でした。彼女にとって、発祥地大村は歴史を変えた水面です。ならば、今再び「もう一度」を引き起こす場として、ここ以上にふさわしい場所など存在しないでしょう。
2022年12月13日(火)”第12R”「トライアル1st」/ボートレースグランプリにおける「下剋上」のメカニズム
トライアル1stでは、賞金ランキングの第7位から第18位までの12名の選手が出場し、トライアル2ndへの勝ち残りをかけて戦います。すなわち、この初日に行われるトライアル1stは11Rのひとつだけではなく、もうひとつ、12Rにも行われることになります。
【初日トライアル1st第12R】
1号艇:白井 英治(3897/山口)
2号艇:椎名 豊(4787/群馬)
3号艇:石野 貴之(4168/大阪)
4号艇:磯部 誠(4586/愛知)
5号艇:羽野 直也(4831/福岡)
6号艇:丸野 一樹(4686/滋賀)
第12Rの顔ぶれは上記の6名。山口支部の絶対的存在にして、ボートレース界を席巻するホワイトシャーク、白井英治選手が1号艇を務めます。ですが、他の艇も虎視眈々。とりわけ若いメンバーがそろっており、「世代交代」の鐘を打ち鳴らす用意をしていることでしょう。
トライアル1st組は、ベスト18のなかでは中位から下位の選手が出場することになりますが、それがアドバンテージにもなりえるのが面白い部分です。
毎年、グランプリ優勝戦には「下剋上」を達成する選手が現れます。上位6名はトライアル2ndからのシード権、さらに高率モーターの優先付与に加え、勝利に近いイン艇を与えられるわけですが、それでゆうゆうと勝ち残れるかというと、そういうわけでもないのです。
他のスポーツでも見られることとして、ノーシードで戦い続けてきた個人やチームが、本来は実力が上であるはずのシード勢を打ち倒すイベントがあります。ボートレースグランプリでも、この「想定外の一撃」が起きると言ったら、意外に思えるでしょうか。
ことボートレースにおいては、その現象が理論立てて説明されます。決して、オカルトやジンクスに留まるものではありません。
というのも、ボートレースではモーターの整備が重要なのは、多くの方がご存じでしょう。たとえ高率モーターであっても、自分の競走スタイルに合うとは限りません。これまではA1級の選手が多く使っていて、見た目の数字だけが良いモーターの可能性もあります。
加えて、ボートレースグランプリの開催時期は冬であり、状況によっては天候の急変も起きやすい時節です。
モーターは気温、水温、風などの諸条件で動きが細かく変わるため、ボートレーサーは常に環境を読み、また今後の動きを予想しながら、整備を行います。単に操縦が上手いだけでは、安定して勝ち残ることはできません。
トライアル1stから登場する選手たちは、こうした「相棒」を初日からパートナーとして獲得し、実際のレースで使用できる点で、トライアル2ndから登場するシード組に優越しているのです。
たとえ数字の面では劣っていたとしても、すでに「自分仕様」に仕上げたモーターがあれば、ジャイアントキリングを起こす可能性も十分に生まれるというわけです。
トライアル2ndから登場の”上位6名”/3日目から登場する最強の選手たち
3日目、すなわち今回のボートレースグランプリでは2022年12月15日(木)から、「トライアル2nd」が始まります。2日間続いた「トライアル1stの勝者」に加え、「2022年の獲得賞金ランキングベスト6」の猛者たちがシード枠として登場。主催者であるボートレース大村が選抜したモーターとともに、真の頂点を目指す戦いへと挑みます。
【トライアル2ndから登場】
第1位:馬場 貴也(4262/滋賀)
第2位:山口 剛(4205/広島)
第3位:片岡 雅裕(4459/香川)
第4位:原田 幸哉(3779/長崎)
第5位:深谷 知博(4524/静岡)
第6位:菊地 孝平(3960/静岡)
今年の「最強の6人」は、上記のメンバーとなりました。このうち、馬場貴也選手と山口剛選手はすでに1億円以上を稼ぎ出しており、もしこの優勝賞金1億円のボートレースグランプリを制するようであれば、単年での稼ぎが2億円を突破することになります。
すでに何度か触れましたが、シード組は枠順においても優遇されます。トライアル2ndも2つのレースに分けられるため、賞金ランキング第1位の馬場貴也選手が第12Rの1号艇、第2位の山口剛選手が第11Rの1号艇に配置されるのです。
【初日トライアル2nd第11R】
1号艇:山口 剛(4205/広島)
2号艇:片岡 雅裕(4459/香川)
3号艇:菊地 孝平(3960/静岡)
【初日トライアル2nd第12R】
1号艇:馬場 貴也(4262/滋賀)
2号艇:原田 幸哉(3779/長崎)
3号艇:深谷 知博(4524/静岡)
現時点で確定している並びはここまで。4号艇、5号艇、6号艇は、トライアル1stからの勝ち上がりを果たした6名が入ります。一方、トライアル2ndに勝ち残れなかった6名が、グランプリシリーズ戦に合流。熱戦が新たな局面を迎え、タイトルとビッグマネーをめぐる戦いは最後まで気が抜けないものとなります。
勝負強さにおいては随一の馬場貴也選手の1号艇ですが、本人もコメントしているとおり、「G1の優勝戦1枠で獲りこぼし」という出来事もありました。
1コース以外からでも1着を獲る卓越した技術がありながら、1コース進入で思わぬ敗戦を迎えることもあるのが、馬場選手の特徴です。トライアル2ndの初戦から、「もしかしたら大波乱が?」という気配まで漂っていると言えるでしょう。
2022年ボートレースグランプリの舞台となる大村の水面についてのおさらい
ボートレース大村は、先に書いたとおりに「競艇発祥の地」です。1952年、元号にして昭和27年。太平洋戦争の終戦から7年弱というころに、「競艇」はその産声をあげました。
モーターボート競走場としての認可は津競艇場のほうが早かったのですが、テストケースとして「中央から遠いことがむしろ利点」になったため、大村は発祥地としての栄誉を獲得するにいたります。
そんな大村の水面の特性は、なんといってもインが強いこと。大村湾につくられたコースの水質はもちろん海水で柔らかく、海コースにしては干潮満潮の差もあまり大きくはありません。
このことから、海水の「走りやすい」という性質のほうが勝ち、コース形態もイン艇に有利となる部分が多く、全国で最も1コースが強い水面としての立場を獲得しています。
実際には、これらの要素は減音モーターや出力低減モーターの導入時に変化したのですが、それでも現在は「大村のインはやっぱり強い」という安定的な立場を保持しています。
ただし、今回のボートレースグランプリも含まれる、「冬の大村」には注意が必要です。全国24場の多くがそうであるように、大村にも北風、ないし北寄りの風がよく吹くようになります。これによって、大村ではホームから1マークまでの水面が荒れやすくなり、結果としてイン艇の盤石をおびやかすのです。
また、大村は海コースであるため、福岡や鳴門といった「代名詞」ほどではないにしても、水面のうねりが起きることがあります。大村の場合はこれが2マーク付近で起きることが多く、時として艇がキャビテーションを起こし、急失速を起こす原因になりえる点は、覚えておいたほうがいいでしょう。
ボートレースグランプリにまで進出するほどの猛者ともなれば、よほど運が悪くない限りは波に遊ばれて大逆転などということは起きませんが、それでもモーターボートは繊細な乗り物であり、同時に勝負は水物です。
どんなアクシデントが起きるかわからないからこそ、ボートレースはボートレースたりえているということを、しっかりと肝に銘じておきましょう。
今年のボートレースグランプリは”タイガーマスク”が乱舞する!
ボートレース大村の魅力のひとつが、多種多彩なコンテンツとのコラボ企画です。『ゴルゴ13』や『ウルトラマン』など、思わぬタイトルと長期コラボを実施し、公式ウェブサイトを丸ごとそのコンテンツの色に染め上げてきました。
そして、2022年の半ばから始まったのが、『タイガーマスク』とのコラボです。白いマットのジャングルで戦うタイガーマスクは、さながら波しぶきとともに戦うボートレースに通じるものがあるのかもしれません。
今回の「ボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)」の特設サイトも、タイガーマスク一色に染まりました。あっちもタイガー、こっちもタイガー。もはやタイガーマスク関連の「タイガーサイン舟券」を探したくなるくらいです。
本来のタイガーマスクの主人公は名前を「伊達直人」、実際のプロレスで活躍した初代タイガーマスクは「佐山聡」さんと言いましたが、そのあたりにヒントがあるでしょうか。
はたまた、白と黒と黄色のカラーが特徴的なタイガーマスクなので、グランプリ優勝戦は125BOXで決まるのやも。そんなオカルティックな考え方からも、今回のボートレースグランプリは楽しめるでしょう。
2022年(令和4年)のボートレースの総決算!頂上決戦を見逃すな!
2022年が暮れていきます。世界でも、ボートレースでも、様々な出来事がありました。もちろん、それぞれの人に、それぞれの出来事があったことでしょう。良いこともあれば、悪いこともあり、言い尽くせない無数の物語が紡がれたはずです。
それでも、1年が終わり、次の1年がやってきます。その移り変わりの瞬間に、最も大きな花が咲く。それがボートレースグランプリという名の、冬にのみ咲く花。見る者をうっとりさせる素敵な花です。
2021年のボートレースグランプリの優勝戦では、歴史に残るアクシデントが起きました。それさえも、今はもう1年前の話であり、この瞬間には希望と期待のみがあります。そうした事実こそが、最も喜ばしい真実なのではないでしょうか。
競艇発祥の地で行われる、史上初の頂上決戦。何もかもが初めてである戦いを、ハッキリと目に焼き付けましょう。歴史の目撃者になれるというのは、きっと、何にもましてすばらしいことなのですから。
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