フライングスタート方式は競艇(ボートレース)の基本!過去の最大返還額は?

フライングスタート方式は競艇(ボートレース)の基本!過去の最大返還額は?

競艇(ボートレース)のスタートは、フライングスタート方式を採用しています。
「フライング」というと、何かスタートで失敗したような響きがするかもしれません。これは半分正しく、半分誤りです。
日本で知られているフライングは和製英語であり、英語における「Flying Start」は助走をつけてのスタートを意味します。
競艇が採用しているのは、この助走つきスタート方式になる点に留意してください。

一方で、フライングスタート方式における不正なスタート、すなわち日本語でいうところのフライングも存在します。
競艇におけるフライングが発生した場合、賭け金がすべて返還される点が最大の特徴でしょう。
他にも、水面を高速で走るモーターボートがフライングスタート方式を採用しているからこその面白みが存在します。
その点について、多様な角度から見ていきましょう。

もくじ


フライングスタート方式は競艇(ボートレース)の醍醐味

フライングスタート方式は助走をつけてスタートする方式であり、それゆえにスタートタイミングが選手、ひいては舟ごとに違う点が駆け引きの面白みになります。
過去4ヶ月の平均スタートタイムはレースの展開要素のひとつとなり、長年競艇を見ているファンでもたやすく予想できない悩みどころを生み出してくれるのです。

競艇がフライングスタート方式を使っている理由としては、競走が海や川、それに湖といった水面で行われる点に注目すればわかります。
海には潮汐があり、川には流速があります。湖はこれらに比べれば動きが小さいですが、それでも風の影響は受けるでしょう。
雄大な自然の動きの中にあって、ボートは笹舟と変わらずに流されるばかりです。

無論、エンジンがあるじゃないかとお思いかもしれませんし、確かにモーターボートはそうした流れに力強く抗う力を持っています。
しかし、各艇を一斉に同条件からスタートさせるためには、どの艇もいったんエンジンを止めて待たねばなりません。
結果として、先に着いた艇からあれよあれよと流されてしまい、6艇が平等にスタートを切ることは困難になるでしょう。
このため、競艇は各選手の技量という公平な基準に任せたフライングスタート方式を採用し、同時にスタートに至るプロセスを「ピットアウト」「待機行動」「スタート」の3段階に分けたのです。


フライングスタート方式における待機行動を知ろう

ピットアウトは、レース前に舟が止めてあるピットから合図とともに出ることです。競馬のゲートが開くのに似ていて、理解しやすいですね。
また、スタートについても、決められた時間内にスタートラインを越えるという意味から捉えれば、納得はしやすいでしょう。
スタートする際に発生するスタート事故、すなわちフライングと出遅れについては後に改めて解説します。

ただ、「待機行動」については悩まれる方も多いのではないでしょうか。
待機行動は、ピットアウトからスタート航走が始まるまでの動作すべてを指します
このため、ピットから飛び出した後に他のコースを取りに行くのも、「待機行動中のルールに沿ったコース進入」になるわけです。

コース奪取は、基本的には不利なアウトから有利なインを狙いに行くため、「前付け」と呼ばれるパターンが多くなります。
しかし、有利なインが取れる代わりに、スタートする位置が深くなる、すなわち助走する距離が短くなってしまう弊害が生まれます。良いことばかりではないんですね。
スタートのタイミングも難しくなるため、せっかくインを取ったのに出遅れてしまい、レースでは何もできずに終わることもしばしばです。
なお、スタート展示で前付けしていたとしても、本番で同じように行動する義務はありません。

前付けのデメリットが極端に出たレースの例が、こちらの動画です。
これではいくらなんでもインが有利とは言えません。

他にも、待機行動においては選手間での駆け引きが行われます。
傍目に見るとぷかぷかと浮かんでいるだけですが、うっかりしていると自分の入りたいコースを奪われかねません。
かといって、急いでコースに入ってしまうと、やはり助走距離が足りないことになってしまいます。

待機行動は非常に細かな規定が決められているため、レース後に「○レース○番は待機行動違反により減点」といった発表がされることもあります。
減点されると、その開催で準優勝戦に進むのは厳しくなるわけですね。
違反の例としては、ボートの先端を必要以上に振る蛇行行為や、他の艇の行動を邪魔する妨害行為があります。
どれだけ自分の利益を主張しつつ、スタートに向けた精神統一を図れるか。多くの意志が絡み合う待機行動は、かなり独特な時間です。

フライングスタート方式のスタートはどういった内容で行われるのか

競艇におけるフライングスタート方式は、大時計(発走信号用時計)の針を基準として行われます。
この時計における表示を基準としてモーターボートは航走を始め、針が0を指してから1秒の間にスタートを行います。
陽光や天候の影響で大時計が見づらい場合でも、例外はありません。
悪条件が重なりやすい競艇場は、フライングが多い競艇場としてファンのみならず選手の間でも語られます。有名なのは、伊勢湾からの西風が吹くためにスピードを整えるのが困難な常滑競艇場(ボートレース常滑・愛知県常滑市)ですね。

とはいえ、コンマ8秒(.80)やコンマ9秒(.90)のスタートでは、成立するとはいっても勝負になりません。
ボートレーサーの多くは、コンマ1秒5(.15)前後でのスタートを平均的に決めています。
また、スタートを得意とする選手はコンマ1秒(.10)に限りなく近いスタートタイミングを取ってきます。
コンマ1秒どころかコンマ01秒を争うバトルが、スタートの瞬間に繰り広げられるわけです。「競艇はスタートで決まる」という言説が出るのも無理からぬほど、レースに影響を与えるのがおわかりいただけるでしょう。

なお、針が0を指す前にスタートしたり、0を指して1秒以上経過してからスタートすると、不正なスタート(スタート事故)の扱いとなります。
当該レースでは正当にスタートを切れなかったとして、選手はそもそもスタートできなかったものとして競走に参加せず、レースから離脱します。
この時、対象となる選手がらみの舟券はすべて購入者に返還されるので、競馬の出遅れとは大きく違うと驚かれるかもしれません。

ただし、舟の転覆や、選手がボートから落ちる落水は、競走に参加した後でのアクシデントです。
競走はすでに成立しているため、競馬の落馬や競輪・オートレースの落車と同じく返還対象にはなりません。

スタート事故の分類として、大時計が0を指す前のスタートは「フライング」といい、1秒以上遅れてのスタートは「出遅れ」といいます。
出遅れはたまにしか発生しませんが、「浮遊物がプロペラに巻き付いたことによる選手責任外の出遅れ」などというケースがあるのは、外部空間で行う競艇ならではの現象でしょう。


フライングスタート方式における「非常識なフライング」とは

フライングについて、「非常識なフライング」の存在もここに書いておかなければなりません。
競艇において、他艇よりも早くスタートすることは、間違いなくレースを有利にする手段です。
このため、わずかでも相手を出し抜こうとしてスタートに臨むわけですが、中には「あまりにもひどいフライングで他艇を道連れにしてしまう」ケースがあります。これが「非常識なフライング」です。

非常識なフライングはコンマ05秒(.05)以上早くスタートしてしまった際に判定され、その日のレースが終わったら開催途中でも出場打ち切りの「即日帰郷」となります。
さらに、フライングをしたのに競走を続けるなどの悪質な違反行為があった場合、「即刻帰郷」として直ちに開催から追い出されてしまいます。

フライングや出遅れは1度すると30日の出走停止が課され、さらに出走停止前の累積回数によって、2回目は60日加算(合計90日出走停止)、3回目は90日加算(合計180日出走停止)と厳罰になっていきます。
4回フライングすれば合計360日の出走停止になるのみならず、事実上の引退勧告が行われるため、いかにボートレーサーにとって恐るべきものであるかがわかろうものです。
また、競艇の開催はグレード別にSG・PG1・G1・G2・G3・一般と分けられていますが、G2以上のグレードレースの準優勝戦以上でフライングをした場合、上記の出走停止とは別に、これらの大レースへの出走除外も課されます。

ボートレーサーはいわば個人事業主ですので、成績と獲得賞金に大きなダメージを受け、生活が一気に傾くことにもなりかねません。
コンマ00秒(.00)ぴったりのスタートはタッチスタートと呼ばれ、誰もが望む理想的なスタートです。しかし、タッチスタートを求めて攻めすぎると、選手生命を危うくしかねない代償を払う必要が出てきます。
何しろ、選手のフライングは売り上げの消失です。レースのグレードが高いほど、とてつもない額の売り上げが返還によって無駄になるため、主催者としてもフライングしてほしくないのが実情になるわけです。


フライングスタートで発生したフライングによる返還額はいくら?

フライングや出遅れが起きた場合、舟券はすべて返還されることをお伝えしました。
では、どれくらいの額が返還されるのでしょう。
これはもちろんレースの売り上げによりますから、前段で説明した通り、大レースであるほど主催者はフライングが起きないことを願います。
一般戦の一般競走や予選競走であれば、1,000万円ほどがレースの総売上げになると考えてください。

その上で、フライングによる最大級の返還額として今でも語り草となっているのが、2002年のSG開催である第12回グランドチャンピオン決定戦の優勝戦です。
舞台は宮島競艇場、広島県廿日市市にあるボートレース宮島でした。当地では通算して4回目のSG開催であり、地元の西島義則選手が勝ち進んで優勝戦まで駒を進めます。優勝戦では白色、1コースを死守できる1号艇です。競艇では断然有利のコースであり、そこまで勝ち進んできた象徴でもあります。
必然的に、西島選手と対抗格の2号艇、東京支部(北海道出身)の熊谷直樹選手の舟券がよく売れました。

しかしながら、なんと西島選手と熊谷選手がそろってフライングしてしまったのです。西島選手はコンマ09(.09)、熊谷選手はコンマ06(.06)で、完全なフライングでした。当時は非常識なフライング制度もなく、かつ優勝戦なので関係ないとはいえ、勝ち急ぎすぎたゆえの大きな勇み足でした。
返還額は24億3513万円、返還率は92.8%にまで達し、まさに歴史的な巨額の返還事例として現在にも記録に残っています。
ボートレース宮島に入るはずだった24億円強は泡沫に消え、お客さんたちの期待と希望と予想はすべて無駄になり、西島選手と熊谷選手はG2以上のレースから1年間除外されることになりました。

実のところ、付加ペナルティがつくG2以上かつ優勝戦や準優勝戦であっても、毎年誰かが必ずフライングを起こしています。
トップクラスになるほどの勝負師だからこそ、薄氷の栄光めがけてリスクを投じる度胸が備わっているとも考えられるでしょう。


競艇におけるフライングスタート方式まとめ

競艇からボートレースに愛称こそ変われど、フライングスタート方式によるスタートは多くのドラマを生んできました。
それは喜劇的な内容もありながら、悲劇的な内容もあり、まさに競艇というスポーツのドラマをよく示しています。
体感速度120km/hで水面を滑走し、コンマ01秒を争う選手たちの姿が輝いて見えるのは、今も昔も変わりません。
ピットアウト、待機行動、スタートをいずれも重要な予想のファクターとして考えつつ、その奥にある無数の駆け引きを存分に楽しみましょう。

[参考資料]
■待機行動関連
待機行動 – BORTRACE公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/jiten/16/y_151.html

■大時計関連
大時計 – BORTRACE公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/jiten/05/y_026.html

大時計 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=384323

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