ボートレーサーも、ファンも、SGという舞台には大きな夢を見ます。今回の「チャレンジカップ2022(鳴門競艇SG)」は、そういった夢の結実とも言える出来事が次々に起きました。
楽しいこともあり、嬉しいこともあれば、悲しいこともありました。勝負の世界ゆえにこそ避けられない、決定的な断絶。勝者と敗者にはそれぞれの物語が生まれ、見る者はその振幅に心を動かされます。
至上の栄誉を目指した戦いは、2022年11月27日(日)、ついに大団円を迎えました。その結末はあまりにも衝撃的で、多くのファンが予想しなかったものでした。いったいどのような出来事が起きたのか、併催されたレディースチャレンジカップの結果、ならびに年末の「ボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)」の展望とあわせてお伝えします。
目次
- チャレンジカップ2022(鳴門競艇)の優勝戦で起きた衝撃の結末!
- 深谷知博選手はこれが2度目のSG制覇!2020年ボートレースダービー以来の美酒だ
- 深谷知博選手がボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)への切符を獲得!
- 文字通りの激突!平本真之選手の勝負駆けが優勝戦に壮絶な展開を呼んだ
- レディースチャレンジカップも超荒れ!中村桃佳選手が殊勲の星!
- 年末のボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)はどうなる?賞金ランキングを確認!
- ボートレースは2022年ラストまで全速力で駆け抜ける
チャレンジカップ2022(鳴門競艇)の優勝戦で起きた衝撃の結末!
「SGの優勝戦が、無難に終わるはずがない」
理性ではそう理解できていても、実際に起こるとなると、やはり驚きが勝ったファンも多いのではないでしょうか。SG競走とは、すなわちボートレーサーにとって最高峰の舞台であり、決して負けられない戦いです。この一戦にすべてを捧げてもいいという覚悟で、最後の6艇に勝ち残った選手たちは決戦へ挑むことになるでしょう。
小鳴門海峡に面したボートレース鳴門。柔らかい水面、鳴門の渦潮が生み出すうねり、それらが織りなすイン受難のコースは、2022年のチャレンジカップにも大きなドラマをもたらしました。
それはまた同時に、「誰もが年末へ向けての勝負駆け」という、チャレンジカップのシリーズ特性が影響した点についても、ぜひ考慮したいところです。ゆえにこそ、「安易には退けなかったのだ」という前提をもって、次の項目へお進みください。
深谷知博選手はこれが2度目のSG制覇!2020年ボートレースダービー以来の美酒だ
2022年のチャレンジカップ優勝戦。この戦いに驚愕というほかない結末をもたらしたのは、6号艇6コースの深谷知博選手でした。
静岡支部の深谷選手は、1988年4月1日生まれの34歳。今回のチャレンジカップの優勝戦に勝ち進んだメンバーのなかでは、篠崎仁志選手と並んで最年少でした。といっても、最年長は山口剛選手と石野貴之選手の40歳ですから、ボートレーサーに不可欠な気力体力、そこへ十全の技量が備わる時期の6名が、最後の戦いまで勝ち抜いたということになります。
そして、レースは決して「順当」ではありませんでした。それは深谷知博選手が劇的な大まくりを放った……というわけではないからです。
スタートのスリットラインにおいて、「逆転優勝」に最も近かったのは、4号艇4コースの平本真之選手でした。図抜けたコンマ06スタートからの、展示タイム最速を生かした猛烈なダッシュが、インの3艇を飲み込みかけたのです。
しかし、ギリギリで抵抗にあって競り合った結果、平本選手の艇が暴れ、隊形は大きく乱れる結果に。すると、深谷選手の差し場ができ、一気に先頭争いを射程圏に入れる3番手に浮上。この状態でも1号艇の山口剛選手が逃げ、5号艇の篠崎仁志選手が迫っていましたが、深谷選手は1周目2マークで絶品のターンを披露し、とうとう先頭を奪い去りました。
その後、山口選手の猛追を受けるものの、深谷選手の優位は揺るがなかったのです。SG競走の制覇は2回目。「ボートレースダービー2020(大村競艇SG)」以来の美酒を味わうことになりました。
深谷知博選手がボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)への切符を獲得!
深谷知博選手のチャレンジカップ制覇は、当然、SG優勝という栄誉に他なりません。ただ、チャレンジカップの名前が示すとおり、この競走は「ボートレースグランプリへの最終便」であり、「賞金王決定戦への特急券」という性格があることを、改めて思い出す必要があるでしょう。
SGのビッグな賞金は、ボートレースグランプリへの扉を押し開きます。しかも、チャレンジカップでは、それが確実なのです。なぜなら、このシリーズの出場資格は「賞金ランキングの上位選手」であり、優勝はすなわちリードを広げるか、あるいは逆転でのボートレースグランプリ出場を決めることになるからです。
今回、深谷知博選手は5日目の終了時点で賞金ランキング25位。ボートレースグランプリ本戦への進出条件となるベスト18には、なおも達していませんでした。ですが、この優勝によって、グランプリ本戦に出場できるだけでなく、トライアル2ndへのシード権対象となる第5位までジャンプアップを果たしました。
ボートレースグランプリの出場の可否を決める賞金ランキングの結果については、後ほど詳しく解説します。
文字通りの激突!平本真之選手の勝負駆けが優勝戦に壮絶な展開を呼んだ
ボートレースで使われるモーターボートは、職人の手によって作られた木製の芸術品であり、激しい戦いのなかで摩耗していく繊細な代物です。それは一定の耐久性を保ちながらも、極限まで重量を減らしての快速を追い求めたことで、ボートレースの興奮を生む原動力となっています。
「それは、時として軽さを思い出させる」
誰もが「あっ」と思った瞬間が、チャレンジカップの優勝戦でやってきました。劇的なトップスタートを決めた4号艇4コースの平本真之選手は、イン艇に引導を渡すべく、猛然と進路を締めにかかります。
しかし、イン艇も黙って見ているわけにはいきません。伸び返しによって得た加速で艇を並べ、外から迫りくるボートに対抗します。とりわけモーターの整備によって、今節でも随一の性能を得ていた2号艇2コースの石野貴之選手が、この平本選手の襲来に立ち向かいました。
4号艇が山を乗り越えるか、2号艇がその挑戦を受け止めるか?
その回答は、意外な形で示されました。攻める針路をとった平本選手の艇が、石野選手の抵抗にあったことで激しくバウンドしたのです。一歩間違えれば命にかかわる事故に発展しかねない、猛烈な動きが生まれました。
通常、このようにインが締められたからには、ほかの艇に展開が向きやすくなります。攻めた選手も守り抜いた選手も、その対応に追われることによって、レースの最短距離を選べなくなるからです。
ですが、平本選手のボートは大暴れして水面をまさかの「横断」。これによって各艇が回避行動をとりながらの航走を余儀なくされ、結果的に1周目1マークは1号艇の山口剛選手がトップでターンしました。ただ、その後の展開は先に述べたとおり。6号艇の深谷知博選手による大逆転が導かれるのです。
かかる状況を生み出したのは、間違いなく平本真之選手の冒険的で攻撃的な進路選択であり、その代償というべきものでした。終わってみれば、とてつもない事故のヒヤリハットで、どうにか完走できたといった始末。
さらには1号艇の山口剛選手も、アクシデントを乗り越えて最大級の好機を目前にしながら、1周目2マークまで肉薄してきた5号艇の篠崎仁志選手と争ったことでターンが甘くなり、深谷知博選手の差しを防ぐことができませんでした。
6艇が互いの意志を持って紡ぎ上げるドラマこそボートレースであり、今回のチャレンジカップの優勝戦はそれが随所に輝く勝負だったと言えるでしょう。
レディースチャレンジカップも超荒れ!中村桃佳選手が殊勲の星!
「チャレンジカップ2022(鳴門競艇SG)」と併催されたのが、女子選手たちによる「クイーンズクライマックス2022(住之江競艇PG1)」への出場権をかけた戦い、「レディースチャレンジカップ2022(鳴門競艇G2)」でした。
鳴門12Rがチャレンジカップの優勝戦なら、そのひとつ前の鳴門11Rにおいて、このレディースチャレンジカップの優勝戦が行われたのです。
そして、すでにこの時に12Rでの波乱の予兆は示されていました。華やかなる女子の祭典を制したのは、こちらも大外、5号艇6コースの中村桃佳選手だったからです。
6号艇の鎌倉涼選手が、4コースまで前付けします。大きくインに切り込んだわけではありませんが、至高の戦いにおいては劇的な効果を及ぼしました。
面白いことには、この鎌倉涼選手は深谷知博選手の配偶者でもあります。夫婦そろって現役ボートレーサー。同じ6号艇で、1人は波乱を呼び起こし、1人は波乱のなかから下剋上の達成者となる……そんなめぐり合わせがあるのもまた、ボートレースの面白みでしょう。
他方、こちらのレディースチャレンジカップを制した中村桃佳選手もまた、圧倒的な主役です。4号艇5コースの守屋美穂選手がコンマ09でトップスタートを放つと、中村選手も負けじとコンマ11の2番目のスタートでそれに続きます。まさしく、アウト2艇のための展開でした。
レースがその楽しき混沌を増したのは、1号艇1コースの「まくり姫」こと高田ひかる選手が、決して無抵抗で敗れなかったのが大きいでしょう。スタートから伸び返した高田選手は、先にまくってきた守屋選手をブロック。これによって、中村選手がまくり差しを行えるヴィクトリーロードが開けたのです。
最後は中村桃佳選手、守屋美穂選手、細川裕子選手の順で決着。5-4-2の3連単は88番人気、36,790円の大波乱でした。ただ、これを超える驚愕の結末が次の最終レースで待っているわけですから、真剣勝負が生み出す一瞬一瞬の積み重ねは、実に面白いものだと唸らざるを得ません。
年末のボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)はどうなる?賞金ランキングを確認!
チャレンジカップが閉幕し、年末のボートレースグランプリへの出場権をかけた算定期間が終了しました。グランプリ本戦に出られるのはベスト18、なかでも多くの恩恵を受けられるトライアル2ndへのシード権を得られるのは上位6名だけです。以下、第20位までを列挙しましょう。
【順位:選手名(登録番号/所属)/獲得賞金額)】
第1位:馬場 貴也(4262/滋賀)/137,622,000円
第2位:山口 剛(4205/広島)/121,955,457円
第3位:片岡 雅裕(4459/香川)/92,111,485円
第4位:原田 幸哉(3779/長崎)/91,175,000円
第5位:深谷 知博(4524/静岡)/89,031,000円
第6位:菊地 孝平(3960/静岡)/86,000,000円
第7位:白井 英治(3897/山口)/83,800,457円
第8位:池田 浩二(3941/愛知)/83,543,000円
第9位:桐生 順平(4444/埼玉)/82,847,133円
第10位:椎名 豊(4787/群馬)/80,285,133円
第11位:石野 貴之(4168/大阪)/78,266,000円
第12位:毒島 誠(4238/群馬)/75,858,000円
第13位:遠藤 エミ(4502/滋賀)/75,637,200円
第14位:磯部 誠(4586/愛知)/74,230,000円
第15位:羽野 直也(4831/福岡)/70,660,833円
第16位:上條 暢嵩(4719/大阪)/66,233,000円
第17位:瓜生 正義(3783/福岡)/65,417,000円
第18位:丸野 一樹(4686/滋賀)/64,095,000円
第19位:篠崎 仁志(4477/福岡)/62,640,000円
第20位:中島 孝平(4013/福井)/62,324,000円
上記のとおり、滋賀の馬場貴也選手と広島の山口剛選手がすでに1億円を突破。稼ぎに稼ぎまくっています。加えて、ベスト6圏内には静岡支部の2名がランクイン。これはグランプリ制覇の大輪の花を浜名湖に持ち帰る、最高のチャンスかもしれません。
また、「ボートレースクラシック2022(大村競艇SG)」を制して女子選手初のSG競走制覇を達成した遠藤エミ選手も、13位にランクイン。女子選手としてボートレース史上初めてグランプリ本戦への出場を決めました。
この遠藤選手を含め、1位の馬場貴也選手、ギリギリ滑り込み18位の丸野一樹選手と、滋賀支部は18人中3つの席を獲得しています。静岡支部の2名もすごいですが、こちらの3名もすごいこと。全国24支部だけでも席が足りないのに、そこから複数獲得するのがいかに大変かは、簡単に想像できます。
逆に、「競艇王国」であった九州の各支部からは、4位の原田幸哉選手と15位の羽野直也選手、それに17位の瓜生正義選手の3名となりました。佐賀の峰竜太選手が「反省期間」にあるからには、福岡支部と長崎支部が「強い九州」の伝統を守るために戦うことになるでしょう。
とりわけ、瓜生選手にはボートレースグランプリ連覇という壮大な夢が掛かっています。たとえ17位であっても、本戦に出るからにはグランプリ優勝戦が狙えるのです。
いよいよ2022年11月も終わり。師走、12月を残すのみとなります。ですが、12月のボートレースは、グランプリだけがすべてではありません。
大晦日を最終日とする、真の大トリである「クイーンズクライマックス2022(住之江競艇PG1)」では、女子選手の頂点に立つ賞金女王が決まります。
周年競走も健在。「競帝王決定戦2022(下関競艇G1)」と「全日本王者決定戦2022(唐津競艇G1)」は、それぞれ同年中2回目の開催となります。前者は開設68周年記念、後者は開設69周年記念で、前回から1年ずつ加えて次の周年を祝います。
年が明ければ、ビッグレースの新定番になりつつある「BBCトーナメント2023(びわこ競艇PG1)」がある点も、見逃せないところでしょう。
年末年始、手に汗握る戦いが途切れることはありません。命がけで走る選手たちのために、ファンもまた魂を込めて応援し、楽しんでいきましょう。全身全霊の楽しみの向こう側には、きっと人生を豊かに彩る世界が待っています。
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