【師弟愛】ボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)の結末は”人間讃歌”!?白井英治が背負った多くの人々の想いを回顧する~宮地元輝の宿願達成とともに

訪れた結末は、記憶にも記録にも残る、すばらしいものでした。ボートレース(競艇)の歴史上、初めて行われたボートレース大村での「発祥地グランプリ」。グランプリ本戦とグランプリシリーズ戦、2つのSG競走が行われたこの戦いは、西国長崎に降る大雪のなかで決戦が催されたのです。

この記事は、後世まで語り継ぎたい2つの決戦について、その詳報をお届けします。たとえ結果を知っていたとしても、そこで描かれたドラマの内容を、より詳しく知っていきましょう。

人間が戦い、その絆とともに走り抜ける。ボートレースの魅力がつまった6日間がもたらしたものを存分に感じていただけるよう、各項目に心をわくわくさせる情報が詰まっています。

目次


山口の白井英治が2022年のボートレースグランプリを制覇!

2022年、令和4年のボートレースグランプリを制覇したのは、山口の白井英治選手でした。現代ボートレースに欠かせない存在である「関門のホワイトシャーク」。常にトップレベルのシーズン勝率を維持しながらも、SG競走の制覇回数は通算2回にとどまっていました。

それほどに、SG競走を制するのは困難である。残酷なまでの現実が垣間見えます。白井選手は「グランドチャンピオン2018(徳山競艇SG)」以来、3年半ぶりのSG制覇。グランプリ、すなわち賞金王決定戦では初めての美酒となりました。

今年はグランプリのみならず、「ボートレースオールスター2022(宮島競艇SG)」の優勝戦でも1号艇を獲得。久々のSG制覇を待望されながらも、3号艇の原田幸哉選手に劇的な逆転優勝を決められた記憶が、多くのファンの脳裏をよぎります。

ですが、その悲しみも悔しさも、すべては年末の最高の舞台での喜びにつながるものでした。優勝賞金1億円のビッグボーナスはもちろん、白井選手にとってこのグランプリを勝ち取ることには、特別な意味があったのです。


長崎県大村市に雪が舞う!その先にあった決戦の景色

西国の長崎県大村市にある、ボートレース大村。九州の冬は案外寒いですが、雪まで降ることはさほど多くありません。玄界灘に面している福岡3場と唐津であれば、まだ開催中の降雪も見られますが、九州の西側に位置する大村で降るのは、よほど寒さが極まった1月や2月などでたまに確認できる程度です。

しかし、2022年12月18日(日)。まだ冬至さえも迎えていない日本列島は寒波に見舞われ、長崎でも大雪が降りました。大村もまた同様であり、最終日の各競走はすさまじい雪景色。まるでボートレース三国のようです。

「日本では、大きく歴史が動く時に雪が降る」

そんな古い格言がありますが、この日、大村を白く染め上げた雪は、まさしく格言どおりだったのかもしれません。その雪が、シリーズ優勝戦とグランプリ優勝戦の直前にいったん止んだのは、まるで天すらも息を呑んで見守っているかのようでした。


師弟の宿願は史上初の「発祥地グランプリ」で実った

グランプリ優勝戦は、「師弟の絆」がメインテーマとなった戦いでした。いえ、正確には、白井英治選手が見事にスタートを決め、1周目1マークで他艇を突き放した時、その誓いが成就したと言えるでしょう。

山口支部の大エースである白井英治選手は、ボートレース、そして競艇の歴史において重要な役割を果たしたレジェンド、今村豊選手を師匠としていました。

1961年6月22日生まれ。山口県山陽小野田市(生誕当時は小野田市)の出身である今村選手は、2020年10月8日に惜しまれつつも現役を引退。39年5ヶ月に及ぶ競技人生で7個のSG優勝と48個のG1優勝を勝ち取り、「艇界のプリンス」などのニックネームで多くのファンに愛されました。

しかし、偉大なる今村選手をもってしてもなお遠かったのが、賞金王決定戦、すなわちボートレースグランプリのタイトルだったのです。

彼が手塩にかけて育てた弟子、白井英治選手は、互いの悲願であるこの究極のタイトルをついに手にしました。それは多くの人の願いを背負った、長い長い旅路のひとつのハッピーエンドであった、と結ぶことができるでしょう。

今村豊さんは、このボートレースグランプリの最終日、レース中継のスペシャルゲストとして大村を訪れていました。優勝戦で1号艇を手にした白井英治選手の緊張たるや、どれほどのものか想像もつきません。

ですが、それは自ら過酷な戦いの連続を繰り広げてきた、今村さんにとっても同じだったはずです。そんな中、白井選手はあらゆるプレッシャーを跳ね除け、賞金王の栄誉を獲得するにいたりました。発祥地グランプリは「歓喜のグランプリ」でもあり、世代を超えたドラマの結実でした。


もう1つのSG優勝戦!「ボートレースグランプリシリーズ2022(大村競艇SG)」はまさかの結末!

大村の夜を歓声で支配したのは、白井英治選手だけではありません。グランプリ優勝戦が第12Rの大トリならば、準メインイベントであり、同じくSG競走の優勝戦として用意されたのが、第11Rの「ボートレースグランプリシリーズ2022(大村競艇SG)」の優勝戦でした。

圧倒的に人気を集めていたのは、無念ながらもボートレースグランプリ本戦で敗れ、しかしナイターに強いポテンシャルでもって1号艇を手に入れた、群馬の毒島誠選手です。

「毒島の優勝は間違いないだろう」

という下馬評が大勢を占めるなか、「ボートレースに絶対はない」ことを教える一撃が炸裂します。主役となったのは、3号艇で3コースから進入した、佐賀の宮地元輝選手でした。


佐賀支部は峰竜太だけじゃない!宮地元輝が大本命を食い取った!

令和のボートレースにおいて、佐賀支部と聞いて連想するのは、多くのファンは峰竜太選手になるでしょう。そこから、長年この支部を支えてきたベテランの深川真二選手や、峰選手の弟子である山田康二選手、上野真之介選手などの名前が出るかもしれません。

しかし、そこに待ったをかけるように、同じ佐賀支部の宮地元輝選手が、この夜は最高の輝きを見せました。

宮地選手には、2022年9月の「福岡チャンピオンカップ2022(福岡競艇G1)」で2号艇からの逆転、初G1優勝を飾り、見事にボートレースグランプリシリーズへの出場権を勝ち取った経緯があります。

1986年11月9日生まれで、登録番号は4445。2007年6月デビューの100期で、同期には桐生順平選手、秦英悟選手、平高奈菜選手といった名前が並びます。

佐賀支部所属ながら、居住しているのは福岡で、とりわけボートレース福岡には深い思い入れがありました。したがって、この水面で初G1制覇を達成できたことは、彼にとって大きな喜びだったのです。

しかし、それから3ヶ月。宮地選手はさらなる喜びを、自らの手で勝ち取りました。2号艇の瓜生正義選手がスタートで凹み、1号艇の毒島誠選手が荒れ気味の水面で甘いターンとなり、宮地元輝選手にとっての栄光への道が生まれました。

放ったまくり差しは的確に毒島選手の懐を捉え、インから立て直してきた瓜生選手の差しも届きません。

初G1優勝から3ヶ月、宮地元輝選手は、今度は初SG優勝の誉れを勝ち取ることとなりました。出世する同期を眺めながら、「鳴かず飛ばず」の代名詞とさえ言われた苦労人が、ついにその才能を開花させた瞬間でした。


大村の夜に輝いた2つの表彰式と2つの感動

2つの力強いドラマは、同じく2つの表彰式によって感動のフィナーレを迎えました。シリーズ戦を制した宮地元輝選手は、愛される要素のひとつである軽妙な受け答えを披露し、現地やネットのファンを沸かせます。

彼の感謝は全国に余すことなく及び、その魅力はいよいよ実績を伴って、広く知れ渡ることになったでしょう。2023年は、さらなる飛躍が期待されます。

そして、白井英治選手にとって最大級の歓喜となる、ボートレースグランプリの表彰式がもたらされます。なんとこの舞台に、今村豊さんがサプライズで登場。彼に花束を、そしてグランプリ優勝者の証である黄金のヘルメットを渡す大役を果たしました。

驚きは、これだけではありません。白井選手はそのヘルメットの感触を味わったのち、おもむろに脱いだかと思うと、敬愛する師匠たる今村さんにかぶせました。師匠が求めてやまなかった栄光のヘルメットを、弟子たる彼が捧げた形です。

今村さんの目には、涙が浮かんでいました。世代を超えた願いが、とうとう実る時がきた。人が紡ぐ物語のひとつが、ここに最高の結末を迎えたのです。


2022年のボートレースは最後の戦いへ

ボートレースグランプリは終わりました。ですが、2022年のボートレースシーズンすべてが終了したわけではなく、なおも必ず注目すべき大レースが残っています。すなわち、「クイーンズクライマックス2022(住之江競艇PG1)」の開幕です。

ボートレースグランプリに女子選手として初めて出場した遠藤エミ選手を始め、女子選手限定の頂上決戦。「賞金女王決定戦」の正式名称にふさわしい戦いは、大晦日に名実を備えた最終決戦を迎えます。

2023年へのカウントダウンは、華やかなる結末へ向かって、最後の直線を迎えました。万事が無事に、ひいては健康に。その願いとともに、命とプライドをかけた戦いの最終章がやってきます。遠藤エミ選手が勝って終わるのか、はたまた他の選手による女王への野心が上回るか。寒波を北へ押し戻す熱さでもって、目をこらして見届けましょう。

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