クイーンズクライマックスは女子ボートレーサーの目指す夢の舞台

クイーンズクライマックスは女子ボートレーサーの目指す夢の舞台

クイーンズクライマックスは、ボートレース(競艇)におけるプレミアムG1競走(PG1)のひとつです。優勝戦は大晦日に行われるため、その年のボートレースの総決算としての立ち位置になります。
本来の締めとしての位置づけは、ボートレースグランプリ(賞金王決定戦)が有していました。しかし、女子選手の技量向上に伴って、さらなる活躍の舞台の整備が求められたことから、グランプリよりも後にクイーンズクライマックス(賞金女王決定戦)が誕生しました。
この記事では、ボートレース浜名湖で行われる今年のクイーンズクライマックス2020の情報に加え、クイーンズクライマックスの歴史や歴代の結果と優勝者、クイーンズクライマックスに名前を連ねるための出場条件や出場資格に至るまで、詳しく解説します。
また、非常に盛り上がった2019年の優勝戦についても触れますので、クイーンズクライマックスの魅力がとことん楽しめ、理解できる内容となっています。

クイーンズクライマックス(賞金女王決定戦)とは


出典:ボートレース公式

クイーンズクライマックスは、女子ボートレーサーだけで行われる最高峰の戦いです。ボートレースグランプリがすべてのボートレーサーの憧れであるならば、クイーンズクライマックスはあらゆる女子選手が目指す頂点といえるでしょう。
同じ位置づけの限定競走としては、45歳以上のベテラン選手限定のマスターズチャンピオン(名人戦競走)や、30歳未満の若手選手限定のヤングダービー(新鋭王座決定戦競走)があります。
これらはいずれもG1競走の中でもさらに格上のプレミアムG1競走であり、いわゆる特定条件の競走では最高峰といえる格式を誇ります。

クイーンズクライマックスは2012年にできた最新のプレミアムG1競走

クイーンズクライマックスは、2011年の番組改定発表において設置が明らかにされ、計画どおりに2012年から施行されました。21世紀に入って初めての大レース誕生であり、女子選手の地位と技量の向上を示す象徴的な出来事になりました。
ボートレースグランプリなどと同じく、クイーンズクライマックスも開催するボートレース場は決まっていません。2012年の第1回は競艇発祥の地であるボートレース大村で行われ、優勝戦はインが強い同地の評判を覆す3コースからのまくり差しで決着しました。
まさしく卓抜した技量を持つ女子選手たちだからこそ魅せられた、至高のレースだったといえるでしょう。
設立当初は、賞金王決定戦に準じて賞金女王決定戦という名称でしたが、2年後の2014年からはクイーンズクライマックスと改めました。
この名称変更に伴って、第1回と第2回は12月中旬、すなわちグランプリ(賞金王決定戦)の前に行われていたところを、1年の大トリとして大晦日に優勝戦が来るような日程に変わりました。
まさしく「女王たちによる最終決戦」としてのクイーンズクライマックスが、1年の最後を彩るわけです。

クイーンズクライマックスはボートのデザインにも注目


出典:ボートレース広報公式Facebook

オールレディース競走、いわゆる女子戦の優勝戦は、定期的にデザインをブラッシュアップし、その華麗なる戦いに華を添えています。
そのオールレディースの頂点を決めるクイーンズクライマックスのため、ボートのデザインは他のどのレース、それこそSG競走よりも美しく鮮やかなデザインが毎年採用されます。
ボートレース公式の広報の公式Facebookにて公開された上記画像は、2019年のものです。あくまでもボートレースの識別色としての役目を果たしながら、美麗であるための細かな装飾がそこかしこに施されています。

ボートレースにおける女子選手たちの強さ

一方で、ボートレースにおける女子選手とは、単なる飾りではありません。現在、プロのボートレーサーとして活躍している選手たちは、男女あわせて約1,600名ほどです。そのうち200名ほど、つまり1割以上が女子選手で占められています。
競馬では藤田菜七子騎手が話題となり、競輪でも高木真備選手や児玉碧衣選手などが一部で知られていますが、藤田騎手は減量のハンデをもらっていますし、ガールズケイリンの選手たちはそもそも男子といっしょに走ることはありません。
「女子は女子、男子とは体力が違って勝負にならない。技術だけで生きていける世界ではない」というのが共通認識として存在し、事実として、隔絶した存在である現実があります。
しかしながら、ボートレースの世界においては完全に平等です。勝率の計算も特別なものなどはなく、女子も男子も公平に計算されます。レースにおいても同じ条件で走りますし、互いに手加減をしません。
それでも、選手の絶対数は才能の発掘の頻度も保証するため、どうしても男子レーサーのほうが活躍する場面が多く見られました。ただ、女子レーサーたちも年々力をつけ、時にはボートレース最高峰のSG競走で男子選手と戦うほどになっています。

クイーンズクライマックスの歴代優勝選手

そうした女子選手たちがオールレディースとして高い技術を見せ合うことになったため、ついにクイーンズクライマックスは生まれました。2012年から2019年まで、8回の開催で優勝した選手たちは、男女混合戦においても活躍する才能ばかりです。
V2を達成しているのは群馬の松本晶恵選手のみであり、それ以外はすべて1回の優勝にとどまっているあたり、絶対女王の存在を許さぬ、ハイレベルな争いであることを保証しています。

第1回:2012年(平成24年) 三浦永理 静岡
第2回:2013年(平成25年) 平山智加 香川
第3回:2014年(平成26年) 日高逸子 福岡
第4回:2015年(平成27年) 川野芽唯 福岡
第5回:2016年(平成28年) 松本晶恵 群馬
第6回:2017年(平成29年) 遠藤エミ 滋賀
第7回:2018年(平成30年) 松本晶恵 群馬
第8回:2019年(令和元年) 今井美亜 福井

クイーンズクライマックス、各開催年の歴代優勝者と所属支部は上記のとおりです。全国各地から優勝選手が出ていることを考えても、ボートレーサー養成所の教育は平等に行われ、また各地域の選手会もしっかりと女子選手を受け入れていることが見て取れます。

クイーンズクライマックスおよびクイーンズクライマックスシリーズの出場資格

クイーンズクライマックス(賞金女王決定戦)の出場資格は、ボートレースグランプリ(賞金王決定戦)をもととして設計されたため、非常に似通ったものとなっています。
まず、クイーンズクライマックスはすべての女子レーサーが対象となります。ボートレースグランプリと同じく、デビュー年などは関係ありません。
そのうえで、賞金ランキングをもとにした選別が行われます。これが第1選考であり、1月1日から10月31日までに獲得した賞金が上位42名に入ることで次のステップに進めます。
さらに、ボートレースグランプリの最終切符をかけた戦いである、SG競走チャレンジカップの開催日まで戦いは続きます。チャレンジカップの開催にあわせてG2競走レディースチャレンジカップが併催されているためです。
11月下旬のこの戦いで最後の賞金の上積みが行われ、第1選考で選ばれた42名を除外したランキングにおける上位12名が、第2選考での合格者となります。
これら選抜された54名の中から、1月1日からチャレンジカップまでの賞金ランキングの上位12名が、クイーンズクライマックスへの出場権を獲得し、年の瀬の女王の座を目指して戦います。
また、ボートレースグランプリにおけるボートレースグランプリシリーズと同じく、クイーンズクライマックスにもG3競走クイーンズクライマックスシリーズがある点にも触れておきましょう。
こちらのクイーンズクライマックスシリーズには、上位12名に入れなかった賞金ランキング13位から54位までの選手が出場し、優勝者には翌年のレディースチャンピオン(女子王座決定戦競走)への優先出走権が付与されます。

クイーンズクライマックス2019は衝撃の展開だった


出典:ボートレース公式

これまで8回開催されたクイーンズクライマックスですが、2019年、令和になっての初めての戦いとなった第8回はすさまじい激闘となりました。山口県周南市にあるボートレース徳山で行われたこの開催は、女子選手の戦いの魅力に満ちたものでした。
優勝戦に誰が進むかわからない、勝敗の入り乱れる状況から、ついに6人が選ばれます。そうして選ばれた6人による優勝戦もまた、一筋縄ではいかない結果となりました。

クイーンズクライマックス2019の万舟決着の優勝戦

優勝戦において圧倒的な支持を集めたのは、インの1号艇を勝ち取った滋賀の遠藤エミ選手でした。
2017年、ボートレース大村で行われた第6回では、優勝戦を含めた4戦すべてを1着という完全Vを成し遂げた遠藤選手は、混戦となった第8回でもファンから信頼されていました。
2017年の獲得賞金は5,390万円にも上り、これは男子を含めたすべてのランキングに直したとしても、第23位に入るすばらしい数字です。そうした活躍もあっての1号艇ですから、ファンが遠藤エミ選手からの舟券を買うのも道理といえました。
しかし、多くの波乱を生んだ第8回クイーンズクライマックスを象徴するかのように、この優勝戦も一筋縄ではいきませんでした。2号艇の守屋美穂選手および3号艇の今井美亜選手がフライングすれすれのコンマ03スタートを決め、1号艇の遠藤エミ選手をおびやかします。
運命の1周目1マーク、遠藤エミ選手の卓抜した技量による先マイ(機先を制するターン)が、わずかに外へ流れました。この間隙を逃さなかったのが、3号艇の今井選手です。
実のところ、今井選手はモーターの機力で劣っていると見られており、内側の3号艇には入ったものの、人気はそこまで高くありませんでした。
しかし、これ以上ないというくらい美しく、そして力強いターンによって、遠藤選手の懐へのまくり差しが決まります。この一撃から1周目の2マークを含めてさらに完璧なレース運びを見せ、見事に1着でのフィニッシュを決め、優勝賞金1,500万円を手にしました。
今井美亜選手は、賞金ランキングの面からもギリギリのラインでの出場だったため、最終的な賞金順位では第3位となり、賞金女王になることは叶いませんでした。
上位にいたのは、第1位が大山千広選手(優勝戦6号艇)の5,683万円、第2位が遠藤エミ選手(優勝戦1号艇)の5,393万円となります。2017年の遠藤選手の額よりも上なのは、それだけ女子選手が男子選手を打ち負かしている証拠でもあるでしょう。

クイーンズクライマックス2020はボートレース浜名湖で開催

2020年も、クイーンズクライマックスはやってきます。今回の舞台はボートレース浜名湖であり、その水面は全24場で最も広く、走りやすいという評判を得ています。それは同時に、逃げ以外の決まり手にも出番が訪れやすい水面でもあるといえるでしょう。
もちろん、イン逃げが絶対的に強いのはボートレースの不動の原則ですし、そもそもボートレース浜名湖は全国平均よりもイン逃げの1着率が高いボートレース場です。
それでも、まくりや差しといったインを揺るがす一撃が見られやすいと書かせていただいたのは、「上位選手による技術が発揮しやすい」という観点に立脚しています。
事実として、ボートレース浜名湖は、最も不利な6コースからの2着率が全国に比べて非常に高く、それだけ戦法の幅が取りやすい水面になっています。
また、G1競走に位置づけられる開設周年競走について、2001年から2020年まで20回分の優勝戦の決まり手を見てみると、逃げ11回、まくり4回、差し2回、抜き2回、恵まれ1回なのがわかるでしょう。
優勝戦ともなれば、インの選手は万全の強さを見せつけて勝ち上がってきたわけですから、いよいよ盤石の才能と性能を持っているわけです。しかし、それでもなお、まくりや差しが決まっているのみならず、技量による道中の追い抜きまで2回起きています。
こうした逆転の目が充分にある浜名湖での賞金女王決定戦は、最後まで結果のわからない熱いバトルになるでしょう。

クイーンズクライマックスという大晦日の華麗なる戦いを見届けよう


出典:ボートレース公式

クイーンズクライマックスは、乙女たちによる一大決戦であり、それは同時に優れた女性たちによる魂の競演でもあります。彼女たちは女子選手の特徴であるスピーディーな伸びと流麗なターンを見せつけ、ファンたちの心を魅了してくれます。
そう、ボートレースにおいて、女子はハンデでもなければ劣っているわけでもなく、男子とは違った特性を持つ存在といえるでしょう。
「クイーンズクライマックスを見ずして年を越せるか」という気持ちで、12月26日から12月31日の大晦日まで繰り広げられるクイーンズクライマックスを見届けるのは、貴方の娯楽観にもひとつのクライマックスを、そして新しい女王の誕生をもたらすかもしれません。

[参考資料]
■クイーンズクライマックス関連
クイーンズクライマックス – BOATRACE 公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/data/record/list?category=3000

賞金女王決定戦競走 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=2293085

PGIクイーンズクライマックス事前申込応募開始 – ボートレース浜名湖
http://www.boatrace-hamanako.jp/modules/news/?storyid=1158

■クイーンズクライマックスシリーズ関連
クイーンズクライマックスシリーズ – BOATRACE 公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/jiten/08/y_307.html

■クイーンズクライマックス2019優勝戦関連
【Qクライマックス】今井美亜が初出場Vの快挙!
https://race.sanspo.com/boatrace/news/20191231/btrnws19123116340003-n1.html

クイーンズクライマックス2019特設サイト
http://www.boatrace-grandprix.jp/2019/qc/

■ボートレース浜名湖関連
SG・G1・G2 優勝者一覧 : 1997年5月1日~ – 艇国データベース
http://www.boatrace-db.net/stadium/gwinner/pid/06/

■動画関連
【G1クイーンズクライマックス優勝戦】①遠藤②守屋③今井④寺田⑤香川⑥大山
https://youtu.be/JKwCM584cAo

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