ボートレース(競艇)における級別の話~級別審査がボートレーサーの運命を決める

ボートレース(競艇)の出走表を見ていると、級別という項目があることに気づきます。それがなんとなく選手のランク付けをしているとはわかるものの、あまり詳しく考えたことはない。そういう方もいらっしゃるでしょう。
ただ、選手にとっては非常に重要な問題であり、昇格降格も含めて悲喜こもごもが発生するのが、級別および級別審査といえます。
この記事では、ボートレース(競艇)の級別について、級別審査やそのボーターが設定される条件を丹念に解説します。級別審査にまつわる事故率や出走数にも触れつつ、2020年から2021年の実例も交えて説明するので、実感を伴ってお読みいただけるでしょう。


目次


ボートレース(競艇)の級別とは

出典:ボートレース公式

ボートレースにおける級別は、そのまま強さの階級(ランク)を表したものと考えていいでしょう。舟券を買うファンにとっては、意識的に予想の要素として加えない限り、あまり意味がない存在です。
しかし、多くのファンが参考にしているでしょう。ボートレース公式でも、最上位のA1は赤色の文字で表現されています。ボートレースの中でも上位2割の腕利きレーサーの証、それがA1級に所属している選手たちです。


ボートレースの級別はA1/A2/B1/B2の4つ

出典:Unsplash

ボートレースにおける級別は、4つのカテゴリで分けられています。すなわち「A1」「A2」「B1」「B2」です。
それぞれの級別は絶対評価と相対評価の複合条件で決まるため、ボーダーライン上で同じような活躍をした選手がいたとしても、ある期は昇格や降格の対象になるところが、また別の期では据え置きのままになるパターンが存在します。
それでは、各級に所属する選手の比率について、以下に書き出してみましょう。

【ボートレースにおける級別の人数比率】
A1級:20%(上位20%)
A2級:20%(上位21%~40%)
B1級:50%(上位41%~90%)
B2級:10%(上位91~100% or 下位10%)

A1級がボートレーサーのトップレベル2割を抜き出したものだとすれば、A2はその予備軍であり、B1が艇界におけるボリュームゾーンで、B2はデビューしたての新人や長期休み明けから復帰してきたベテラン選手などが配属されます。
ここでピンと来た方もいらっしゃるでしょう。B2級には、決して下手な選手だけが所属するだけではありません。B2級の選手は下位10%と認識されがちですが、それはあくまでも級別を分ける条件の中でのワーストというだけです。
新人選手はスーパールーキーを除いて、いきなり舟券絡みを見せるのは困難でしょう。ところが、様々な理由から休んでいたベテラン選手がB2として戻ってきた場合、見かけの級別にだまされていると、とんでもなく上手い競走を見せつけられる羽目になります。


ボートレースの級別が決まる条件

出典:ボートレース公式

ボートレースの級別を決める条件は複数あり、すべて基準を満たすことで上の級に所属できます。いずれも数値として明確に定められているため、公明正大な制度といえるでしょう。
級別の決定プロセスは、「級別審査」という名称を持っています。1年間を前期と後期とみなし、前期に1回、後期に1回の級別審査が実施されます。
前期は5月1日~10月31日の成績をもとに算定し、決定した級別は1月1日~6月30日、すなわち翌年の前半期に反映されます。後期は11月1日~4月30日の成績から審査を実行し、決定した級別は7月1日~12月31日の後半期に反映されます。
級別審査で使用する数値指標について、その内訳を見てみましょう。

【級別使用する指標とその数値】
● 勝率:順位点を積み重ねることで割り出される数値。字義どおりの1着を取る確率ではないので注意が必要となる。
● 2連対率:対象期間の競走で1着または2着になった確率。
● 3連対率:対象期間の競走で1着または2着または3着になった確率。
● 事故率:選手責任によるフライング、出遅れ、妨害失格などの事故点を出走数で割った数値。ほかには転覆、落水、沈没、不完走、不良航法、待機行動違反がある。
● 最低出走回数:期間数に必ず走らなければならない回数。確率が基準になるため、少ない回数でごまかすのを防ぐための措置となる。

上記の5つの要素が、級別審査において使われます。例外的に、レースの内外で大きな問題を起こした選手がいた場合、褒賞懲戒審議会の裁定によって出場停止処分を課され、その間の未出走で最低出走回数を満たせず、B2に降格するケースも存在します。
加えて、事故率が0.70を超えると、ほかの指標がどんなに良くても強制的にB2になります。ボートレーサー養成所での厳しいお叱りが待っているでしょう。

【級別所属要件】
[A1]
2連対率30%以上
3連対率40%以上
最低出走回数90回以上
勝率上位
[A2]
2連対率30%以上
3連対率40%以上
最低出走回数70回以上
A1級を除く勝率上位
[B1]
勝率2.00以上
最低出走回数50回以上
A1級およびA2級を除く勝率上位
[B2]
A1級、A2級、B1級のいずれにも該当しなかった選手。
または、事故率が0.70を超過した選手。この条件はあらゆる条件に優先する。

【事故点詳細】
優勝戦でのスタート事故:-30点
優勝戦以外でのスタート事故:-20点
妨害失格:-15点
選手責任の失格および欠場:-10点
選手責任外の失格および欠場:0点(事故点付与なし)
不良航法および待機行動違反:-2点


2021年1月~7月(対象期間:2020年5月1日~2020年10月31日)の級別審査の実例

出典:ボートレース若松公式ツイッター

参考記事:2021年1月から適用の選手級別(2021年前期)を発表 ~峰 竜太選手(佐賀支部)が勝率8.90で第1位~ – ボートレース公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/site/news/2020/11/11957/

2020年11月1日、ボートレース公式がお知らせにアップした記事です。5月1日から10月31日の判定期間が終わったため、翌日にはすぐ2021年1月1日から6月30日まで使用する級別が発表されています。
あっさりとしたものですが、ファンにとっては大きな要素ではない表れでしょう。一方で、当事者たるボートレーサーにとってはあっせんにも関わる内容のため、前期後期の各期末が近づくたびに、激しいボーダーの争いが繰り広げられます。
その中でも特徴的なのが「勝負駆け」です。勝負駆けの説明については後ほど詳しく行いますので、ぜひ続けてお読みください。


褒賞懲戒審議会による出場停止処分の実例

出典:日刊大衆

級別審査は明確な数値をもとに実施されますが、数値には見えない部分に事件や事故について、褒賞懲戒審議会が裁定を下すことがあります。先の項目で軽く触れたので、覚えておられたでしょうか。
褒賞懲戒審議会が出場停止の判断をするのは、事件や事故などによって懲戒の裁定が妥当と考えられた時です。2020年の出来事を実例として示しましょう。

参考記事:競艇A1級の重成一人容疑者、妻への暴行容疑で逮捕
https://www.asahi.com/articles/ASN3Q5W7BN3QPLXB004.html

香川支部のA1級レーサー、重成一人選手は妻への暴行によって現行犯逮捕されました。いわゆるドメスティックバイオレンス案件ですが、刑事事件としては不起訴になっています。
しかし、社会に与えた衝撃の大きさを鑑みて、褒賞懲戒審議会は重成一人選手に15ヶ月の出場停止処分を課しました。
ボートレーサーは、いわば個人事業主です。出場停止期間中は無収入になり、時には生活苦が襲ってくるでしょう。スタート事故の累積による30日や90日の休みだけでもつらいところに、450日近い出場停止です。
とはいえ、やはり「暴行容疑によってボートレースの品格を貶めた」という側面から考えると、こうした一罰百戒も妥当な部類に入るのかもしれません。

“オシリーナ”の夫の不倫疑惑相手、Twitterを開設し怒りの猛反論! 生々しいLINE画面が流出
https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_43939/

ゴシップやスキャンダルも懲戒の対象となりえる例として、東京支部のA1旧レーサーである後藤翔之選手の話もしておきましょう。こちらは写真週刊誌に不倫疑惑を報じられたのが原因でした。
報道が出たのは2019年の新春です。不倫疑惑が持ち上がったのみならず、後藤翔之選手がスマートフォンで外部と連絡を取っていた疑惑が持ち上がり、懲戒の必要性が上昇しました。
調査の結果、下された裁定は出場停止3ヶ月でした。後藤翔之選手は当初から疑惑そのものを否定しており、元グラビアアイドルの配偶者である秋山莉奈さんとの間に第2子が生まれています。これは疑惑が起きた後のことなので、夫婦関係は致命的なステージには到達しなかったといえるでしょう。
2021年1月現在、後藤翔之選手はA1級に返り咲き、東京支部の一線級レーサーとして競走を続けています。ともあれ、ボートレーサーはセンシティブな職業であるゆえに、その振る舞いも気をつけなければならないという典型例になるでしょう。


ボートレース(競艇)の級別は舟券予想にも役立つ

出典:ボートレース三国

ボートレースにおける級別は、選手にとって大事です。しかし、ファンが上手く使うことによって、舟券予想にも貢献します。ただし、「A1級だから強いに違いない」という認識では、ほぼ間違いなく肩透かしを食うでしょう。
ボートレースがまだ競艇のみを呼び名としていたころから、万舟券は数多く生まれてきました。B1級の選手がA1級を倒すような事態のとき、往々にして大きな配当が飛び出します。なぜなら、誰もがA1級レーサーがB1級レーサーに打ち勝つと考えているからです。
場合によっては、多数派と違う道に行くことで、劇的な勝利を得られるでしょう。


勝負駆けの概念

出典:ボートレース下関

級別が予想で有効に働く場面として、もともとベテランだった選手がB2に落ちたときが狙い目になります。ただ、これは全国勝率が成績表示に反映される前の話で、しっかり数字が出てしまった後では、あまり効果的な舟券にはつながりません。
ただ、「勝負駆け」については級別と密接に関係があり、それでいて舟券への貢献が高くなる傾向にあります。
勝負駆けとは、前期後期の各半期に訪れる「級別審査に使用する得点の対象期間の終盤」を指します。ここで上位に入らないと、下の階級に落ちてしまう。あるいは、ここで上位取ることによって、上の階級に入れる。そうした状況が考えられます。
小さな着順を取ることが条件なので、級別以外の場面でも勝負駆けは発生します。ボートレースの開催は、予選で勝ち取った得点率上位が準優勝戦に駒を進めるので、開催の中盤から終盤にかけてのレースは準優勝戦への進出をかけた得点率の争いです。
事故点による減点を避けるため、クリーンな競走を心がけつつ、なおかつ1着2着と良い着順を取ることが、ボートレーサーたちにとっての至上命題になります。そして、そんな願望を達成するために際どいスタートもいとわないのが、勝負駆けというわけです。
級別に関する勝負駆けでも、同じような光景が見られます。とりわけボートレーサーは成績不振が続くと引退勧告を受けるため、必死で食いつくための勝負駆けさえも目撃できるでしょう。


級別はボートレースの楽しみのひとつ

出典:ボートレース公式

級別は、あまり目立つ存在ではありません。ファンからすれば、ランクが4つにしか分かれていないのは予想のファクターには使いづらいですし、「B1のくせにやたら上手いな」という感想を抱くのがせいぜいなことも多いでしょう。
ですが、級別こそがボートレーサーにとっての命綱であり、生涯現役でいられるかどうかの分水嶺になります。
勝率や2連対率に目を引き寄せられがちですが、それらすべての要素を包含する級別の面白さを知ってみてください。審査期間の勝負駆け、選手の実力を図る指標としての級別に思いを巡らせると、ボートレースの楽しい部分がさらに明らかになっていくでしょう。


[参考資料]
LEVEL.1 ボートレーサーの4つの階級(ランク) – BOATRACE公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/level1/l1_02_01_01.html

級別 – BOATRACE公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/jiten/07/y_047.html

級別審査 – BOATRACE公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/jiten/07/y_048.html

事故率 – BOATRACE公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/jiten/12/y_085.html

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