【篤志家】ボートレーサーが様々な場面で多額の寄付を行っていることを知っていますか?

ボートレーサー養成所が高倍率かつ超過酷なだけに、無事にデビューして活躍した暁には、大きな稼ぎが期待できるのがボートの選手の強みです。
年末のボートレースグランプリの賞金だけでも1億円という超高額。正賞だけなら、公営競技で世界一の賞金額を誇ります。本当に限られたトップレーサーしか立てない舞台とはいえ、ビッグな夢にあふれた話といえるでしょう。
しかも、そうして稼いだトップ選手たちは、惜しげもなく様々な期間に寄付をしていることをご存知でしょうか。
もちろん、税金対策の一環という側面もあるでしょうが、それだけでは説明がつかないほどの高額や継続性のある寄付をしており、西洋でいうところの「ノブレス・オブリージュ」を実践しています。
本記事では、そうしたボートレーサーたちによる寄付の実態について、まずは原資となる収入の状況に軽く触れてから、実際の事例を挙げながら見ていきます。

目次


ボートレーサーの平均収入を改めて確かめる

寄付をするためには、当然お金が必要です。プロフェッショナルのアスリートにして個人事業主でもあるボートレーサーは、どれくらいの収入があるのでしょうか。
この疑問については、BOATRACEの公式サイトが回答してくれています。ボートレーサーの平均に加え、SG戦線で優勝戦にも食い込むような選手の例も加えて、いくつかの角度で確かめてみましょう。


全ボートレーサーの平均年収は約1,700万円

ボートレーサーは約1,600人いて、この人数は毎年のデビューと引退とで概ね保たれています。引退は年齢に伴うものもあれば、成績不振による引退勧告でやむをえずというパターンもあり、ボートレースのクオリティが保持されています。
こうしたおよそ1,600人のボートレーサーの平均年収は、約1,700万円と発表されています。競馬の騎手や競輪やオートの選手に比べても高額で、「稼げる職業」と胸を張って言えるでしょう。
これほど高い収入を得られるのは、ボートレーサーが極度に専門的な職業である点が挙げられます。
もちろん競馬の騎手も競輪選手やオート選手も立派なアスリートでスペシャリストですが、ボートレーサーは操縦技術だけでなく、すぐれたエンジニアとしての整備技術も要求されます。
どんなに操縦が上手くても、整備が下手だと良いモーターのときにしか勝てない平凡な選手で終わります。一流たるためには、操縦、整備、それらを天気や気温や湿度、波の状態などにあわせて微調整をしていく経験とセンスが必要です。

出典:ボートレーサーの平均年収は? – BOATRACE 公式
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/faq/racer/f_03_3.html


SG競走の優勝賞金は1,700~3,900万円

そうして才能を磨き上げた先に、SG競走という頂点が待っています。年末のボートレースグランプリの1億円は絶対的な存在ですが、その付帯的な存在であるグランプリシリーズの賞金額を最低限として、ボートレースクラスやボートレースダービーなど、いずれも3,000万円台の高額な設定が成されています。
2020年の賞金ランキングを紐解いてみても、賞金王に輝いた峰竜太選手の2億5,302万円を筆頭に、寺田祥選手が1億5,593万円、毒島誠選手が1億5,520万円と、10名の選手が1億円プレーヤーになっています。
また、彼らを含む43名が5,000万円以上の獲得賞金を達成しており、その中には女子レーサーである平高奈菜選手まで含まれています。男女の区別なく稼げるボートレースの面目躍如といったところでしょう。


ボートレーサーの寄付事例

こうした収入の背景を持つボートレーサーたちは、どのような寄付を実施しているのか。特に有名な守田俊介選手の事例を始めとして、いくつかピックアップしました。そこからは「名選手ほど寄付を欠かさない」実態が見えてきます。


守田俊介選手のSG優勝賞金3,500万円寄付

その守田俊介選手の事例とは、同選手がボートレースダービー2015(浜名湖競艇SG)の優勝賞金3,500万円を、すべて東日本大震災の復興支援に寄付したという大ニュースでした。
世の中に多くの篤志家あれど、苦労に苦労を重ねて手にした3,500万円もの大金をすべて寄付したという事例はほとんどなく、ボートレース界のみならず、多くのスポーツファンを驚かせました。
守田俊介選手自身はそれほどお金に頓着していないと言いますが、ある種の豪傑で太っ腹な気風を感じさせます。


日本モーターボート選手会ほかによる新型コロナウイルスに6億円寄付

寄付の精神は、ボートレーサー個人に留まりません。日本モーターボート選手会、日本モーターボート競走会、BOATRACE振興会の各団体にも、強く公共奉仕の心が根付いています。
一例として、2020年4月の事例を紹介しましょう。2020年から世界的に始まった新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威は、またたく間に日本にも押し寄せました。ダイヤモンド・プリンセス号の騒動から程なくして、医療従事者の皆さんは最前線で戦うことを強いられます。
病床はたちまち逼迫し、入院患者の受け入れ問題が浮上しました。ホテルさえも足りなくなっていたのは、2021年6月現在でも記憶に新しいところです。
そんな中、日本モーターボート選手会、日本モーターボート競走会、BOATRACE振興会はボートレース業界の各団体の連名という形で、日本財団を通じて活動資金6億円の寄付を実行しました。
ひとときは収入減にあえいだボートレース業界です。この出費は決して小さいものではありません。
しかし、ボートレースは社会とともにあるものとして、その立場を明確にしました。こうした姿勢は持続化給付金の不正受給問題に対する断固たる処置にもつながっていきます。


毒島誠選手は長年の寄付による紺綬褒章を受章

コロナ禍が世界を覆い尽くし、日本列島を苦しめるなかでも、ボートレースは感染拡大防止策を実施しながら、どうにか開催を継続していました。
ボートレーサーたちも同様に厳しいコンディション管理を強いられながら、懸命にそのパフォーマンスを維持し、己に課せられた戦いの運命に力強く挑んでいました。
それはまたコロナ以前からの日常を防衛する戦いでもあります。非日常のなかで日常を死守するのは並大抵のことではありません。しかし、毒島誠選手は強い克己心を保ち、トップクラスの競走を続けながら、篤志家としての日常を堅守し続けたのです。
もともと、毒島誠選手は様々な地域へ寄付を実施していました。その対象は、各種の自然災害で被害を受けた被災地です。
日本財団が設立した「災害復興特別基金」は、集まった寄付金を適切に分配し、自然災害の被害を受けた被災地の復興に役立てるための基金です。毒島選手はこの基金に定期的な寄付を続けていました。賞金が入るたびに実施していたというので、億を稼いだこともある毒島選手なら、相当な額になったでしょう。
紺綬褒章の受賞要件が500万円以上の寄付であることからも、多額の賞金を寄付し続けていたのは明白です。紺綬褒章は天皇陛下より賜る褒章。式典では日本財団の笹川陽平会長から毒島選手へ紺綬褒章が手渡されました。
1984年1月生まれの毒島誠選手は、2021年6月現在でなおも37歳の全盛期といえるトップレーサーです。これからもさらに寄付を続けてくれることでしょう。


稼ぐ選手は善行の精神もすごい

個人から守田俊介選手と毒島誠選手、さらに組織としての日本モーターボート選手会、日本モーターボート競走会、BOATRACE振興会の寄付の事例を紹介しました。
よく稼ぎ、よく寄付する。どの選手も持つ者の義務を果たし、さらなる心身の強さにしているかのようです。まるで稼ぐことに集中しすぎないことが、強さの条件のようにさえ見えます。
金を稼ぐことは悪ではありませんが、人はその使い方を見ています。一流の人間ならば一流の使い方をするはずという期待は間違いなく世間にあり、また実際に気品ある振る舞いをしている人物こそがどんどんその才覚を伸ばすのですから不思議なものです。
ここで紹介した事例は、多くの実例の一部に過ぎません。さらにいえば、寄付はその額が多いから偉い、少ないから偉くないというものでもありません。それでも、誰かのためになることをする気高い精神が強さになる、そんな事実を教えてくれているようです。

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