【競艇復活】ボートレースの売上が再び上昇しているのには理由があります

ボートレース(競艇)の人気が伸び続けています。より正確にいえば、かつて「競艇」だったころの規模を目指して、一度は落ち込んだ人気と売上が再び上昇に転じているということになるでしょう。
2021年現在、令和を迎えた日本の娯楽は多様化し、また人口も減少の一途をたどっています。その中にあって再び成長産業に返り咲けたのには、いったいどのような理由があるのか。
ボートレースの現在の状況、たどってきた歴史、ほかのエンタテインメントとの比較など、多角的な要素を取り上げ、詳細に分析していきます。

目次


ボートレース(競艇)の売上と経常利益が毎年良化している

地方競馬、競輪、そしてボートレース。一時期は地方自治体の経済を支えた優良物件が、やがて時代の流れとともにお荷物と言われるほどの赤字経営へと次々に転落していきました。
しかし、2021年を迎えた今、各公営競技は復活の道を歩み始めており、とりわけボートレースは劇的な売上と経常利益の増加を見せています。


ファンを増やし続けるボートレース

かつての公営競技は地域の娯楽の王様でしたが、逆にいえば「それしか楽しみがない」からこそ運営できていた側面も否定できません。人々の娯楽は常に行動範囲内に限られ、とりわけエキサイティングなレースを披露してくれる競艇、競輪、競馬、オートといったものに心惹かれました。
そのうえ、お金を賭けるという「運命共同体」的なのめり込み方ができるわけですから、これはもう熱狂するのも致し方ありません。団塊の世代、とりわけ地方社会にとってのディズニーランドは、このような公営競技でした。
しかし、今は多様性の時代です。娯楽もまた大いにその幅を広げ、オンラインでもオフラインでも様々なイベントや楽しみが用意されています。
ゆえにこそ、「競艇」は「ボートレース」として新生する道を選び、抜本的な改革とともに平成後半から令和までを駆け抜けてきました。その成果が全24場の経営状態の大幅な好転として表れており、根底にはしっかりとしたファン作りの成功がありました。


バブルという名の幻想

昭和の終わりから平成の始めにかけて、バブル経済やバブル景気と呼ばれた狂乱の時代がありました。高度経済成長時代の最終盤。日本国が我が世の春を謳歌していたころ、公営競技もあふれんばかりの富の恩恵を受けていました。
ですが、まさしく泡のように消えたその経済的優位は、「失われた30年」とも呼ばれる反動となって、今なお日本に負の影響を与え続けています。近年まで地方競馬、競輪、オートなどの廃止が相次いだのも、バブルの幻想から逃れられなかった部分が否定できません。
多くの人たちが「日本は世界に冠たる経済大国」だと思っていました。世界においては「日本人といえば金持ち」という風評さえ生んだにもかかわらず、今や大陸の強国たる中国の後塵を拝する形になっています。
バブルというものがいかなる現象であったのかは、なおも研究の余地が大きいところではあります。ともあれ、公営競技はそのために大いに栄え、やがて大いに悩まされることになったとご理解ください。


ボートレースの人気はなぜ伸び続けているのか

このような状況にありながら、近年のボートレースは売上と経常利益が急成長を続けています。ニュースを見れば景気の悪い話題が飛び交い、先進国の中で唯一と言っていいレベルで個人所得がマイナスへ突き進んでいる事実が示されているにもかかわらずです。
あるいはそういう時代だからこそ、人はボートレースの魅力に再び惹かれることになりました。しかも、今回は日本の経済成長に背負われる形ではなく、日本モーターボート選手会、日本モーターボート競走会、BORTRACE振興会が一丸となって良質な活動をしてきた結果です。
いったいどのような要素がボートレースの人気をけん引しているのか、いくつか重要なポイントを挙げていきましょう。


個性豊かな選手たちの存在

ボートレースがただ競艇であったころから、魅力的な選手たちが水面を滑走していました。オールドファンがかつての競艇のあり方、ルール、そして選手に思いを馳せるのも当然なくらいに、魅力的なレーサーが活躍していました。
それでも、現代のボートレーサーたちもまた、輝く才能と突き抜けた個性を持った綺羅星たちです。彼らはまたインターネット全盛のこの時代に適合した考え方や振る舞いを持っており、TwitterやYouTubeの活発な利用にその一端が表れています。
認知度の向上は、ボートレースを始めるきっかけになりえます。特に、コンビ芸人の千鳥さん、特に大悟さんがテレビ番組『相席食堂』で峰竜太選手にたびたび触れたことで、峰選手の知名度は劇的に向上したといわれています。
その峰竜太選手が絶対的な人気選手かつ最高勝率のトップレーサーとして君臨している事実が、今のボートレース界を面白くしている要因のひとつかもしれません。
打倒峰竜太は近年のボートレーサーにとっての命題であり、その構図がまたファンの心を掴んでいます。


女子選手が特に華やかという事実

あらゆる場面で言われる内容ではありますが、競馬、競輪、オートに比べて、ボートレースは女子選手の割合が非常に高くなっています。
さらには、伝統的な女子選手の受け入れ文化が根底にあるため。優秀な人材が次々に集まってくるようになり、中には男子選手に引けを取らないほど稼ぐトップレーサーも現れました。
一例として2020年のボートレース賞金ランキングを紐解けば、約1,600名いるボートレーサーの34番目、第34位に女子最上位として平高奈菜選手がランクインしました。獲得賞金額は5,491万円。「ボートレーサーは性別に関係なく稼げる」を体現するスコアです。
ボートレース公式は時に「美女レーサー」「イケメンレーサー」を売り出しつつ、しかし彼女たちが決して容姿だけの存在ではなく、厳しい勝負の世界で懸命に戦い抜いていることをアピールしています。
一過性のアイドル的な人気ではなく、「ボートレーサーはかっこいいし、稼げる」という地道なイメージ戦略が、ボートレース全体の人気と知名度の向上につながっています。


ナイター開催の増加

ボートレースの好調な売上に大きく寄与しているのが、毎日複数のレース場で設定されているナイター開催です。仕事が終わった勤め人も、たとえ自宅ではなく帰宅中にスマートフォンからでも気軽に舟券購入ができるため、女子戦と同等以上に販売促進につながっています。
こうした波に乗るために、各地でナイター設備の増改築が進められ、ここ数年で新規にオールナイターへ移行するレース場が複数登場しました。ボートレース大村の「発祥地ナイター」やボートレース下関の「海響ドリームナイター」はその代表例です。
ナイター開催とナイター設備の増築にあたって、課題が必ずつきまといます。ひとつはコスト面の問題、もうひとつは近隣住民との合意の問題です。
コスト面はナイター開催による利益の純増を見込むことで解決できるとしても、住民との折り合いは相当な難題です。現代では全24場で高品質な減音モーターが採用されていますが、それでも夜の強烈な照明とボートのモーター音、それに人の往来の増加は見込まれます。
このポイントについて、ボートレース場は都市型競艇場を除き、多くが郊外に立地している点が幸いしました。ナイターは開催場が増えることで別のレース場とのシナジー効果を生み出し、ともに売上を増加させることに成功しました。
なお他競技の例としては、競輪場は街中にあるケースが多く、ナイター化に踏み切れないために同地区を間借りしてナイター開催やミッドナイト開催を主催しているパターンがあります。


パチンコとパチスロの規制強化

娯楽の多様化はボートレースから多くのファンを離脱させ、売上の低下を招きました。しかし、今はボートレースが逆にファンを受け入れ、ほかの業界が苦境にあえぐ形となっています。これもまた自由競争の定めです。
特に厳しい情勢下にあるのが、度重なる規制強化が実施されたパチンコ・パチスロ業界です。この業界もまた戦後から歴史を積み重ね、デジタルパチンコの登場からいよいよ隆盛を極めました。
しかし、あまりにも高すぎる射幸性にとうとう司法のメスが入り、あらゆる機能や販促に制限がかけられます。
かつてパチンコやパチスロには、プロのライターが宣伝するのが付き物でした。ですが、このような施策も禁じられた結果、ライターたちの多くがボートレースにその活躍の場を移しています。
パチンコ台やパチスロ台も射幸性を低減せざるを得なくなり、結果として「一撃で負けを勝ちにする」ような夢のある台が消えていきました。これはボートレースなら万舟券、競輪やオートなら万車券、競馬なら万馬券を狙うのを封印されたも同然です。
「ギャンブルの負けをギャンブルで取り返す」のは往々にして傷口を広げる考え方ですが、本当に一発逆転を決めてしまう可能性が十分にあるからこそ、面白みが生まれます。パチンコとパチスロはそれを法律で規制されたため、真綿で首を絞められるような状況に陥り、ユーザーもまたボートレースなどの競合へと流れつつあります。


ボートレースは世界を相手に戦うことになる

ボートレースは猛烈に成長を続けていますが、多様化の進む娯楽の存在は、常に激しい競争が続いていることを示しています。
特に、立法府で一進一退を続けているのがカジノ法案です。同法案が成立して日本に本格的なランドカジノやオンラインカジノが誕生すれば、たとえインバウンドが基本線であっても、ボートレースを始めとした既存の公営競技、さらにほかの娯楽にとっては大きな脅威になるでしょう。
そうでなくとも、今やインターネット網は世界中のエンタテインメントにアクセスすることを可能にしました。ボートレースが本場への来場者数を減らしながらも売上を増加させているのは、日々の楽しみはスマートフォンやパソコンでネット越しに享受するものへと常識が移行しつつある証左です。
ボートレースにとって、敵は世界のあらゆるエンタテインメントです。それでも、すばらしいボートレーサーたちがますます熱い戦いを見せ、決してほかの娯楽では味わえないようなスリルと興奮を与えてくれることが、最大の武器となってくれるでしょう。

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