【宿願成就】ヤングダービー2022(多摩川競艇PG1)は近江翔吾が成し遂げた!ラストチャンスを最高の形で掴み取る

若手ボートレーサー最強を決める戦い、ヤングダービー。2022年の多摩川開催も、すばらしい戦いによって終幕を迎えました。

優勝した選手にとどまらず、この開催で輝きを放った選手たちは、きっと大きな経験を積んだと言えるでしょう。それは嬉しいだけではなく、悔しさを伴うものだったかもしれません。しかし、いずれも未来へつながる戦いになったはずです。

この記事では、ボートレース多摩川を舞台に行われた今回のヤングダービーについて振り返ります。とりわけ、優勝戦の展開を中心としつつ、さらにシリーズの中で悔しい思いをした選手にもスポットライトを当て、6日間の激闘の末に残されたものを概観していきましょう。

目次


近江翔吾が2022年のヤングダービーを激勝!超抜モーターを生かした!

2022年のヤングダービーを制したのは、香川の近江翔吾選手でした。1993年2月18日生まれの29歳。2023年2月には30歳を迎えることから、今回が最後のヤングダービー挑戦でしたが、見事にそのラストチャンスで最高の輝きを見せたと言えるでしょう。

登録番号4643の若武者がついにG1タイトルを手にしたことで、香川支部はさらに盛り上がること必至。今回が3回目のG1優出だった近江選手は、まさしく「幸運を実力によって活かした」レース運びの連発で、頂点に輝きました。

というのも、今回、彼が引き当てた22号機は、多摩川はおろか全国で見てもトップクラスの超抜機。2連対率65.69%、3連対率78.43%というおばけモーターでした。

しかし、その好機を活かすのが簡単ではないからこそ、ボートレースは予想が難しいわけです。良いモーターを引くだけで勝てるのならば、ここまで魅力的な競技にはなりません。

近江選手は、このエースモーターにふさわしい走りをしました。6日間の全8走のうち、実に7走がコンマ0台発進。そして、2日目から最終日までの怒涛の6連勝によって覇を唱えたわけです。

「自分には伸びシロしかない」

自らをそう評する彼は、千載一遇のチャンスを逃さずにビッグタイトルを勝ち取ったことで、大きく飛躍してくれることでしょう。


誰も近江翔吾に追いつけない!ヤングダービー2022(多摩川競艇PG1)の優勝戦は圧巻

今回のヤングダービーは、まさしく近江翔吾選手のためのシリーズだったと言えます。2日目からの6連勝でのPG1優勝もさることながら、モーターに振り回されないそのスタート勘の抜群さが、多くのファンを熱狂させました。

予選1位通過、そして準優勝戦快勝。1号艇で迎えた優勝戦でも、近江選手は攻める姿勢を忘れていません。

各選手がギリギリを攻めたスリットラインのなかでも、コンマ05は堂々のトップスタート。モーターの仕上がりが超抜で、しかも近江選手の技術も際立っているとなれば、もはや誰もその横に並ぶことなどできませんでした。

結果的には1着が1号艇の近江翔吾選手で、2着が5号艇の上條暢嵩選手、3着が6号艇の仲谷颯仁選手。3連単1-5-6は16番人気の3,790円です。

とはいえ、この決着にいたるまでにも、悲喜こもごものドラマがありました。それは後ほどの項目で語ることになりますが、なんといっても主役は「大本番でも不動だった」近江翔吾選手です。

デビューから11年10ヶ月。レース前には、近江選手は「ここで勝たなきゃ意味がないんです」と口にしていました。G1出場は実に45回目。ついに、その実力に実績が追いついてきました。

8月のボートレースメモリアルでは、同じ香川支部の先輩である片岡雅裕選手が悲願のSG初Vを達成。今年は滋賀支部の勇躍にとどまらず、香川支部にも強烈な追い風が吹いています。


近江翔吾はヤングダービー優勝で2020年の借りを返した

29歳にして初G1タイトルを勝ち取った近江翔吾選手。その事実からもわかるとおり、これまでの選手生活のなかでは、非常に悔しい思いをしたことが幾度もありました。

特に、G1初優出は近江選手にとっての苦い思い出です。それは地元丸亀で開催された、「四国地区選手権2020(丸亀競艇G1)」でのことでした。5号艇とはいえ、ようやく掴み取った「ラスト6人」のうちの1席。最高の走りをしたかったでしょう。

しかしながら、攻めの姿勢で臨んだレースは、まさかのG1競走優勝戦でのフライング。ここで生じた返還は大きく、主催者の売上目標達成が立ち消えとなるほどでした。

同じレースを走る選手にも、信じて舟券を託してくれたファンにも、迷惑をかけてしまった。その重い事実さえも乗り越えて、近江選手は鍛錬を重ね、1戦1戦を大切に走ってきました。

一流になるボートレーサーの資質、あるいはボートレースに限らず、伸びる人間の資質というものは、まさしくこうした常に前を向く姿勢にあるのかもしれません。G1タイトルホルダーとなった自信が、さらに近江選手を高みへと押し上げてくれるでしょう。


2022年ヤングダービーでも水神祭が続々!その向こう側にある喜びと悲しみ

2022年のヤングダービーでも、嬉しいG1初出走、さらにG1初勝利を決める選手が次々に現れました。世代限定戦とはいえ、こうしたグレードレースで戦える感覚を掴むことは、今後への大きな自信になるでしょう。

しかしながら、その勝利は、より強い相手が待つ戦いの舞台へ進むことにほかなりません。高みを目指す者の宿命として、大きな挫折に打ち当たることもまた、覚悟しなければならないのです。

とりわけ、その「敗北」の味は、ヤングダービーでは格別の意味合いを持ちます。勝ちもあれば、負けもある。ボートレーサーはファンの声援だけでなく、舟券という「重い価値」を背負って戦うがゆえに、厳しい言葉を受ける立場から逃れられません。

そうした観点から、今節G1初勝利を達成しながらも、まさかの結末を迎えた選手を紹介していきます。


末永和也が泣いた!優勝戦で見せた美技と失態が糧になる

佐賀の末永和也選手は、今回の開催で大いに輝いた1人と言えるでしょう。1999年2月16日生まれ、佐賀支部所属の23歳は、走るたびに技術と度胸の絶妙なバランスを見せてくれるかのようです。

まして、その強さが際立った結果、G1初勝利の今節に初優出まで達成してしまったのですから、これはもう諸手を挙げて褒め称えるしかありません。

今回の優勝戦メンバーのうち、単純なモーターの2連対率で最も劣っていたのは、この末永和也選手でした。にもかかわらず、初日からの優れた競走の連発で予選3位通過。準優勝戦も1着で、優勝戦の3号艇を獲得したことは、今後も楽しみな逸材である事実を示しています。

ですが、彼にとって、この2022年のヤングダービーは「歓喜」とともに「試練」にもなりました。迎えた優勝戦、コンマ15スタートは悪くないはずなのですが、スリットでは後手。連覇を目指す4号艇の羽野直也選手に絞られ、万事休すに見えました。

ところが、ここまで勝ち進んできた末永選手の武器である、鋭いターンが発動。2番差しながらも艇団の懐に食い込んで2番手へと浮上し、逃げる近江翔吾選手を追いかけます。

その走りのままに、まさかの逆転勝利なるか?

そんなわずかな希望は、3周目2マークまで攻め続けたためにバランスを崩して失速し、あわや落水しかけながら後続の4号艇とも接触。その結果、シンガリ6番手まで大きく後退という「失敗」によって打ち砕かれました。2連単1-3や3連単1-3流しを持っていたファンからすれば、阿鼻叫喚の瞬間だったでしょう。

「出足は本当に良かった。思い切って行き過ぎてしまった。ああいうミスが自分は多い。買ってくれたお客さん、みんなに申し訳ないことをした。これからは舟を安定させて安心して見てもらえる選手になりたい」

レース後、このようにコメントする末永選手は、大粒の涙を流していました。彼の誠実さを表すとともに、本気で戦ったからこその苦い失速だったことを、改めて教えてくれます。

この出来事で決して萎縮することなく技術を磨き、目指す安定性を確保できたならば、きっと結果によって汚名を返上する機会はやってくるでしょう。


若き才能が艇界の未来を背負っていく

勝負の世界は美しく、同時に残酷でもあります。たった1人の優勝者の影には、血さえもにじむような悔しさがそこかしこにあることでしょう。それを苦しみで終わらせないためには、自分こそが最高の勝利へたどり着くほかないのです。

今回、近江翔吾選手は、まさしくそれを成し遂げました。超抜機の当選という絶好の機会をG1初優勝という結果で飾れたことは、同時に彼の能力を証明したと言えるでしょう。

一方で、末永和也選手もまた諦めずに粘り強い走りを見せ、あと少しで逆転優勝もあるかもしれないというところまで肉薄しながら、最後のミスで巨大なつらさを味わうことになりました。

それでも、末永選手の技量が若手の中では輝いていたからこそ、こうして優勝戦進出の誉れを勝ち取れたのです。その一瞬だけは「若さ」が出たかもしれませんが、きっと克服可能だと信じられる瞬間です。

折に触れて、今回のシリーズのことを思い出しましょう。いつか、今回のヤングダービー出場選手の中から、SGという最高峰の舞台で歓喜に包まれる選手が現れるでしょうから。


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